復刻連載【灰色の街に生きて】
18歳になれば法律上、性的サービスを提供する風俗店で働ける。マキさん(20)=仮名=は18歳の誕生日直前、派遣型ヘルスの面接を受けた。「理由はお金」。居場所はなく、一緒に暮らす家族もいなかった。 物心つく前に両親が離婚し、母子家庭で育った。キャバクラで働く母は遅くまで帰らず、次々に恋人をつくって追い掛けた。食事は作ってもらえず、理由なく殴られた。「小学生の頃の記憶があまりない。ていうか、消したんですかね」
「稼げることが最初は楽しかった」
高校1年で中退し、家を出て友人宅を転々とした。飲食店などで働いたが、給料はわずか。入店後は1日平均3万円。「稼げることが最初は楽しかった」。ほどなく眠れなくなった。 客は大切にしてくれた。それも1時間で使い捨て。「愛があるのか分からない家庭」で育った身にはつらかった。睡眠薬、そのうち覚醒剤に手を染めた。 彼女には福岡拘置所の面会室で話を聞いた。「いろんな気持ちを忘れたくて。無になりたかった」。逮捕から2カ月、母は一度も顔を出していないという。
実働12日で43万円
実働12日で43万円-。一般社団法人Grow As People(GAP、東京)の2015年度調査に、性風俗で働く377人が答えた平均月収だ。20歳前後だと80万円を超える。始めた動機は(1)金銭的な理由(215人)(2)仕事がない(60人)と続いた。 一方、社会全体では、フルタイムで働く女性の平均賃金(16年)は約24万5千円と、男性の7割程度にとどまっている。単身女性の3人に1人が「貧困状態」という国の統計もある。 「奨学金の滞納が増えたニュースを見て卒業後が不安になった」。福岡市・中洲のソープランドで働く大学生も「金銭的な理由」でスカウトの誘いに応じた。今は奨学金に手を付けず、大学院への進学も視野に入れる。「友達と遊ぶ時間も欲しいから、働き方としては魅力的」。店で待機中に論文を書く日もある。
「志願兵」と自称する女性も
「志願兵」と自称する。中洲のソープランドで働く20代後半の女性は「このままだとまずい」と焦り、求人広告に自ら飛びついた。 人付き合いが苦手で恋人ができたこともなく「引きこもっていた」。GAPの調査で、始めた動機の3番目は「何となく」(47人)。彼女の場合、もう少し明確な意志があった。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース