食欲の秋。栗、サツマイモ、カボチャなどのスイーツが充実するこの時期、スイーツに関する悲しいデータが発表された。
帝国データバンクによると、地元で愛される“街のケーキ屋さん”の倒産が相次いでいるという。
今年は、8月までに30件が倒産。これは、2000年以降で最多だった2018年の同時期の25件を上回る数字。
通年で最多を更新する可能性も出てきている。
ここ数年“スイーツブーム”と言われる中、一体なぜ街の洋菓子店の倒産は急増しているのか?
東京都洋菓子協会広報部長で、昭和4年創業、世田谷区祖師ヶ谷大蔵で80年以上の歴史を持つ洋菓子店「コンディトライ ニシキヤ」3代目オーナーシェフの西田喜孝さんに詳しく話を聞いてみた。
原因は働き方の変化?
――洋菓子店の閉店が急増しているというが、実際、肌で感じる?
そうですね。そんな感じは受けています。
――閉店する原因は何だと思う?
昔と今で、働き方が大きく変わったことが原因なのでは?
かつては、洋菓子職人になるために若い人は丁稚奉公して、技術を学びました。住み込みで働くこともあり、労働時間は今のように細かい基準はありませんでした。
今は、洋菓子店も働き方は一流企業と同じ。
若い子もそれを求め、週休2日は当たり前ですよね。昔のようなやり方では、若い子は集まってこないので、対応できないお店は運営できず閉店してしまうこともあるのかもしれません。
コンビニ以上のクオリティを出せるかが腕の見せ所
――コンビニスイーツなどの台頭も原因の1つ?
コンビニのスイーツは、確かにおいしいですし、洋菓子店と比べて値段も安いです。そのため洋菓子店はコンビニよりも上のクオリティのものを作らなければいけません。
コンビニ以上のクオリティを出せるかがシェフの腕の見せ所。それを怠る洋菓子店は厳しいかもしれません。
――小麦、バターなどの材料代の価格が上がってきているのは関係ある?
確かに材料代は安くはないですね。
小麦、バターもそうですが、イタリア産の栗を使ったりと、重要な食材をヨーロッパから取り寄せるため高くなります。
後、箱や包装紙もなんでもいいというわけでなく、デザイン、紙質などこだわると高くなります。
――昔と比べ、売れ筋商品は変化している?
確かに変化しています。
昔からあるメニューでも、材料や作り方を時代に合わせて変えなければいけません。100年前のレシピをそのまま出すなんてことはとんでもないです。
――「昔はクリスマスケーキで1年間の利益を確保できた」という話を聞くが、昔はあった?
それはないですね。昔でも不可能。ありえないです。
――今後、洋菓子店が生き残るにはどうすべきか?
今、生き残るのが大変な時代になっています。
ただ単においしいケーキを作ればよいというものではなく、PAY払いができたりと、新しい情報についていかなければいけません。
その時、その時で経営者として最善を尽くすことが大事だと思います。
コンビニスイーツなどの影響で“街のケーキ屋さん”が苦境に立たされているのは本当のようだ。
商店街にあるような昔ながらの店のよさはもちろんあるが、専門性やSNSでの発信など、時代に合わせた変化をすることが生き残りの鍵になるのかもしれない。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース