文章に接しさせるのに、早すぎることはない
この「てんとうむしの本」(岳陽舎)は透明シートを使ったフランスのおしゃれなしかけ絵本です。
「はじめての発見」というシリーズのうちの一冊で、シリーズは全部でちょうど50冊あります。 宇宙や光の本などもありますが、 手始めには身近なよく見る「てんとうむしの本」あたりがいいでしょう。
いまは、0才のお子さんもこのシリーズはよく見てくれます。
小さな子どもに本を読んでやるのはいいことだ、ということは、 おそらくどなたでも思ってらっしゃると思います。
ではなぜ本を読んでやることが必要なの?
日本の子どもは6歳前後になるまでに、 もし地方語がある地域ならば地方語の話し言葉、 標準語の話し言葉、 に加えて標準語の文章体を覚えなくてはなりません。
日本では文章体の標準語が正式な言語なので、これを使いこなせないと一人前だと思われないからです。
小学校に上がった頃の子どもたちはまわりの大人に「ちゃんとしゃべりなさい」と、よくいわれます。
「ちゃんと」はどういう意味かというと「文章体の日本語」を「文法を使って」話しなさい、 ということなのです。
でも言語、というものはまず聞く、話す、なので、 文章体の日本語をたくさん聞いて体のなかにそういう言葉が入 っていないと、話せるようにはなりません。
本というのは子ども用であっても( 大阪弁で書かれたものなど特殊なもの以外は) 基本的に文章体で書かれます。
一見、やさしそうに見えますが「あるところにおじいさんとおばあさんがいました」という文章は、文法を使った文章体の日本語なのです。
そういう文章をたくさん読んでやって聞かせないと
「ちゃんと」話せるようにはなれない……。
なので、大量に絵本を読み聞かせする必要があるのです。
一日に一冊読むだけでも一年365日、×6年ですから、 およそ二千冊の本を読むわけですが、たいていのお子さんは小学校に上がるまでに読んで~、という本を読んでやると一万冊ほど読むことになります。
いまの赤ちゃんはおしなべて賢いので、以前のように一ページに一つの言葉しか書いてない、いわゆる赤ちゃん本の時期はあっというまに終わり、一行の文章の本にすぐいくお子さんが多いです。
そうして以前は一枚目のページと二枚目のページがつながっている、ということがわかるのに5、 6か月はかかっていたと思いますが、いまはもっと早い……。
下手すると2ヶ月あたりでもう“最初から最後まで全部見る”んですよ~、というお子さんがいたりします。
向こうは日本語を覚えたがっています。
言葉を覚えることがそのまま快感になります。
本によって知識と世界が広がっていくのを楽しみます。
そうして、人間は知らないことを知ると感動し、 楽しいと感じる生き物なので、 生きているということは楽しいことだ、ということをしみじみ実感するのです。
どうぞお子さんに、そうしてお孫さんに本を読んでやってください。
■赤木 かん子(本の探偵)
1984年、子どもの本の探偵としてデビュー。子どもの本や文化の評論、紹介からはじまり、いまは学校図書館の改装からアクティブラーニングの教えかたにいたるまで、子どもたちに必要なことを補填する活動をしている。
高知市に「楽しく学校図書館を応援する会」として学校図書館モデルルームを展開中……。
著書多数。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース