父親と子どもだけのお出かけ「#ゆるゆるお父さん遠足」が、全国に広がっています。誰でも遠足の主催者になれ、SNS上で開催を表明するだけ。参加の連絡は特に求めない。当日の過ごし方は自由――。そうした「ゆるゆる」具合が特徴です。主催した人や参加者は、どんな思いでかかわっているのでしょうか。話を聞くと、遠足が注目を集める背景として、仕事という肩書重視の人付き合いに偏り、「パパ友」が作りづらい父親特有の実情が浮かび上がってきました。(朝日新聞記者・高橋健次郎)
SNSで呼びかけ、20回以上開催
「#ゆるゆるお父さん遠足」は、SNS上の呼びかけが、実際のつながりに発展して始まりました。
ウェブデザインの会社を営む都内の男性(42、子育てとーさん:@kosodate10_3)が、ツイッターに「男親だけで子ども連れてピクニックとか行きたい」と投稿したのは昨年の夏。その2カ月後、普段からツイッターでやりとりしていた別の父親らと、都内で初めての遠足を開きました。
ホームページ(HP)を整え、開催情報だけでなく遠足の開き方や参加方法もまとめて公開。活動の様子をツイッターに投稿すると、各地で遠足を開く父親があらわれました。東京、大阪、名古屋、静岡などで、これまで計20回以上開かれています。
開催の告知方法は「#ゆるゆるお父さん遠足」とハッシュタグを付け、日時や場所をツイートするだけ。参加者は、特に連絡する必要はありません。リストバンドを目印に集まりますが、過ごし方は自由です。別の参加者の子どもと遊ぶ人も、自分の子どもと遊ぶ人も、親同士で話す人もいます。
家庭に重き置く自分「許された」
確かに手軽です。ただ、それ以外にも父親たちを引きつける理由がありそうです。どんな気持ちで遠足にかかわっているのか。呼びかけ人の子育てとーさんさん、遠足を主催したこともある、ぐでちちさん(38、@gude_chichi)、たろっくすさん(33、@taroxdai)の3人に聞きました。
「『父親は、バリバリ働かなくてはいけない』。かつては、そんなイメージに縛られていました。でも、遠足に来る父親は、バリバリ働いている人もいますが、時短の人も、育休をとる人もいます。だから、家庭に深くコミットする私自身の働き方も許されるような気がするんです」
呼びかけ人で、5歳と3歳、2児の父親の子育てとーさんさんは、性別役割意識が強かったと言います。
仕事人間だったと、自分を振り返ります。ウェブデザイナーで、徹夜も当たり前。子どもが生まれた後は、「お金を稼いで子どもを大学に」と、さらにアクセルを踏みました。ところが、ほとんどの家事や育児を担い「ワンオペ」状態だった妻は孤立し、疲れ果てていきました。そして、ある時、こう打ち明けられます。「お金よりも、家族と過ごす時間を大切にしてほしい」
それから、仕事をセーブし家族とかかわる時間を増やしました。それでも、「男は仕事」のようなイメージが頭をもたげる時があります。そんな時、当たり前に子育てにかかわる遠足メンバーに、家庭に重きを置く今の働き方を「許された」と感じ、葛藤が和らぐそうです。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース