“疲労骨折”マウンドに立ち続けた悲劇のエース
沖縄で中学生のチームの監督を務める大野倫さん。名門・沖縄水産の投手として夏の甲子園でチームを準優勝に導くなど将来を期待された選手でした。しかし、肘の痛みを抱えながら1回戦から決勝までの6試合・全773球を1人で投げ抜き、その代償として投手生命を絶たれました。
沖縄に帰り病院に行くと、右ひじは疲労骨折と診断。閉会式でも大野さんの腕は、くの字に曲がったままでした。卒業後、大学で外野手に転向し読売ジャイアンツからドラフト5位で指名を受けました。しかし、二度とマウンドに立つことはありませんでした。
「投げられるようにはなりました。今でも曲がった状態ではあるんですけれどこれ以上は伸びない」(元沖縄水産高校 うるま東ボーイズ 大野倫監督)
大野さんの問題をきっかけに高野連は、1994年から甲子園出場が決まった選手のメディカルチェックを行っています。
「甲子園出場を義務付けられているチーム、沖縄水産の背番号1を背負っているという責任感もあって。だから頑張れたというよりも責任ですね」(元沖縄水産高校 うるま東ボーイズ 大野倫監督)
しかし大野さんの疲労骨折から28年たったいまも、1人の投手が投げ抜く「連投の美学」は変わっていません。
767球を投げた横浜高校の松坂大輔投手、948球の早稲田実業の斎藤佑樹投手、去年、金足農業の吉田輝星投手は881球を投げて注目を集めました。
この状況に横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智選手は警鐘を鳴らします。
「高校野球は教育の場とよく言われていますが子供たちのためになっているかという疑問があります。大人が中心になるのではなくて、子供たちの将来を考えてあげることが一番の優先だと思います」(横浜DeNAベイスターズ 筒香選手)
守るべきは投げ切る“美学”ではなく球児たちの未来。その発言には球界を代表するバッターの切なる思いが込められていました。
高野連はことし、投球障害に関する有識者会議を開催。球数制限が導入されると多くの投手が必要になり、部員不足の学校が苦しむ現状が報告されるなど賛否は分かれました。とはいえ、「一定の日数の中で投げられる球数を制限すること」を答申に盛り込む方針を決めています。
「少しでも議論が進むことが大事。後ろ向きの考え方もあってしかるべきだと思う。それも検証した上である程度の方向性を見出したい。」(新潟高野連 富樫信浩会長)
高野連は去年、投手の負担軽減を目的に延長13回以降はランナーを1、2塁に置いて攻撃を始めるタイブレーク制を導入するなど対策を進めていますがまだ道半ばです。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース