高橋俊成
名古屋出入国在留管理局で2021年3月に亡くなったスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)を巡る国賠訴訟の第6回口頭弁論が10日、名古屋地裁であった。弁論後の進行協議で、原告側が4月6日に監視カメラ映像の一部を公開したことについて、国側が「法の趣旨を潜脱する」と批判した。
生前のウィシュマさんの様子を収めた映像は295時間分あった。原告側は全面開示を求めたが、国側はこのうち約5時間分を証拠提出した。
原告弁護団によると、国は4月28日付の意見書で、民事訴訟法は証拠の複製は当事者や利害関係者に限ると定めていると指摘。映像公開によって両者以外による複製が可能になり、法的な問題性が生じたとした。裁判所も公開前に懸念を示していたと指摘した上で、原告側が公開したことについて裁判所の考えを示すよう求めた。この日の進行協議でも、これに沿った主張を展開したが、裁判所は特に言及しなかったという。
協議後の会見で、原告弁護団は「公開前に裁判所から公開への懸念は示されていない」と述べ、国の主張に反論。その上で公開の正当性を強調した。
一方、この日の弁論では、原告側が医師2人による意見書を提出。入管側の対応とウィシュマさんの死亡との因果関係を検証するためには、入管の監視カメラ映像の全面開示が必要だとした。(高橋俊成)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル