和歌山市で1998年に起きたカレー毒物混入事件で、殺人罪などで死刑判決が確定した林真須美死刑囚(60)が5月、無罪を求めて2度目の再審請求を和歌山地裁に申し立てた。「時間がない」と涙ながらに弁護士に訴えたという。25日で事件から23年。今も動機は明らかになっていない。(国方萌乃、西岡矩毅)
「毎日毎日、死刑になるんじゃないかとおびえ、生きていくのが限界です」
昨年9月、大阪拘置所の面会室。生田暉雄(てるお)弁護士(79)は、アクリル板越しに林死刑囚と向き合っていた。涙を流して訴える林死刑囚は頭のほとんどが白髪で、事件当時の写真より頰はほっそりしている。
生田さんが「やりましょう」と答えると、「ありがとう、助かった」と肩をふるわせたという。
「再審弁護人としての弁護をお願いします」
生田さんの元に初めて手紙が届いたのは、2016年秋ごろ。その頃多数の案件を抱えており、「すぐにはできない」と手紙で返した。
「一日も早く再審無罪を勝ち取りたい」「再審中でも(死刑)執行があり、日々恐怖です」
その後も月に一回程度手紙が届き、生田さんも林死刑囚の求めに応じて拘置所に本を差し入れるなど、やり取りが続いた。仕事が落ち着いた昨秋に初めて拘置所を訪れ、再審を引き受けた後も面会を重ねてきた。
申し立ての準備のため拘置所から送ってもらった裁判資料にはどれも付箋(ふせん)が貼られ、林死刑囚が独房で熱心に読み込んでいた様子がうかがえた。
5月に申し立てをする前は、面会の度、「早く申立書を出してくれ」と涙声で懇願された。「オリンピックが中止になれば、話題をそらすために死刑が執行されるかも知れない」と焦りを見せていたという。
「なぜあんなことを」見えない動機
「なぜあんなことをしたのか知りたい」。カレー事件被害者の会副会長の杉谷安生さん(74)は林死刑囚が無罪を訴える限り動機が明かされず、今も心にわだかまりを抱える。
林死刑囚は一審では黙秘を貫…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル