カンサイのカイシャ ここがオモロイ!
山林でクマが木の表皮をはぎ取ることがあります。はぎ取った痕は「クマハギ」と言われ、被害にあった木は、ほとんど値段がつきません。木は伐採されず、山が荒れる原因にもなります。そんな地元の問題を解決しようと、木にとことん向き合う木工所が京都にあります。
吉田真理(まこと)さん(47)は幼いころ、森に囲まれて暮らし、木は身近な存在だった。カブトムシの飼育に使うおがくずは、製材所でもらっていた。
地元は京都市右京区の山里で、銘木「北山杉」の産地だ。市の中心部からは車で約1時間かかる。
「地元だったら、もっといい木があるのに」
兵庫県内の大学卒業後、京都市内のアパレル企業に就職。デパートへの新規出店に携わり、店ごとのコンセプトを踏まえて内装や調度品を考えた。棚などの材料にこだわろうとすると、発注先は「質のいい木の板がなかなか確保できない」という。
思い出したのは、地元の製材所にあった木材だ。「地元だったらもっといい木があるのに……」。もどかしさと共に、木工への興味が芽生えてきた。
転機は、勤め先の倒産だ。「新しいことを一から始めよう」と、2002年に長野県の技術専門校に入学し、1年かけて木工の基本技術を学んだ。
卒業を控え東京の家具製作所に就職しようと考えていたころ、母親が体調を崩したとの知らせが届く。面倒を見られるよう、故郷の近くで働くと決め、卒業した03年に実家に近いところで木工所を立ち上げて代表についた。
使う木材の8割が地元産。地元産の木のあたたかみを知ってもらうため、無垢(むく)材にこだわりテーブルなどの家具製作を受注してきた。
地元に密着して仕事をするうちに、仲間もできていた。漆作家の堤卓也さん(45)とは、「マイクロプラスチックを減らそう」と、一緒に木のストローを開発した。
クマハギ、一体なぜ?
仲間の一人、林業の四辻誠悟さん(42)が約3年前、聞き慣れない言葉を口にした。「クマハギに困っている。被害にあった木で何か作れないか」
吉田さんは早速、クマハギが…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル