高津祐典
ハーバード大学のマイケル・サンデル教授(68)が能力主義の課題を指摘した「実力も運のうち」(早川書房)が話題を呼んでいる。発売からわずか1週間で4刷2万8千部になり、ツイッターでは「能力主義(メリトクラシー)」が議論の的になっている。
100万部のベストセラーになった「これからの『正義』の話をしよう」から11年。今回は「学歴偏重が容認されている最後の偏見」と訴えている。
どういうことなのか。取材に応じたサンデル教授は、能力主義の勝者が「努力が足りない」と敗者への謙虚さを失いがちだと指摘した。「私たちの社会では、誰もが自分自身を成長させ、満足のいく仕事に就くためのスキルを身につける機会を同じように得られるわけではありません」と話す。
著書では、オバマ元大統領の能力主義とトランプ前大統領の誕生との関係も詳細に分析する。「エリートに対する怒りが民主主義を崖っぷちに追いやっている時代には、能力の問題はとりわけ緊急に取り組むべきものだ」と訴えている。
例えば名門大学が集まる「アイビーリーグ」では、学生の3分の2あまりが、所得規模で上位20%の家庭の出身になっている。能力主義が社会の分断をより深めているとし、「誰もが尊敬され、社会的な評価と敬意を得るために尊厳ある仕事をできるようにするのが重要。私たちは、拡大する不平等を是正しなければなりません。成功している人たちは、成功に対する考え方を変えていかなければなりません」と訴えた。(高津祐典)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル