石井力
黒い牛をシマウマのようなゼブラ柄に塗装し、アブなどの吸血昆虫の被害を少なくしようという山形県置賜総合支庁農業振興課の実験が小国町の畜産農家であった。黒く温かい所を好むというアブの習性を利用。ゼブラ柄にするとアブが近寄らなくなることが確認できたという。
実験は、愛知県農業総合試験場が導入し、効果が報告されている「ゼブラ柄塗装による吸血昆虫対策技術」を試したもの。同県のホームページによると、吸血昆虫は牛にストレスを与えて生産性を低下させるほか、吸血で病気が媒介される危険性があることが放牧時の課題の一つになっている。
このため、畜産農家は放牧時、「アブトラップ」という黒色の農機具を使い、アブをできるだけ駆除するなど試行錯誤を重ねる。
実験では、小国町の遠藤畜産で繁殖牛3頭をスプレーでゼブラ柄に塗装した。吸血昆虫が近寄ると、牛は尻尾を振ったり、頭や耳を動かしたりする忌避行動を取るとされ、その動きについて調べた。8、9月の実験でゼブラ柄の牛は、通常の牛よりアブを嫌う忌避行動が4~8割少なかった。
遠藤畜産の遠藤寛寿さん(35)は「効果はあったと思う。ただ、1週間くらいで塗装が落ちてしまう」と話した。
10月には、ほかの農家に対する説明会が遠藤畜産であり、「見た目の違うゼブラ柄の牛が、ほかの牛から攻撃されてしまうことはないのか」などの質問が出た。県置賜総合支庁の担当者は、課題として認識しているという。
同支庁は省力化やえさ代軽減のため、休耕田などを活用した「簡易放牧」を広めようとしている。牛を怖がり猿などが畑に近寄らない効果も期待され、吸血昆虫対策を通じて簡易放牧の取り組みを進める考えだ。(石井力)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル