プロ野球の北海道日本ハムファイターズが今年、本拠地を札幌ドームから、北海道北広島市に造った自前の新球場に移します。プロスポーツチームは、どんな環境を望んでいるのか。地元の自治体に求めたいことはなにか。元プロ野球選手で福岡ソフトバンクホークス取締役も務めた、小林至・桜美林大教授に聞きました。
こばやし・いたる
1968年生まれ。元ロッテ投手。博士(スポーツ科学)、MBA。福岡ソフトバンクホークス取締役などを経て現職。近著に「野球の経済学」など。
感じた「日本の行政の壁」
――ファイターズの本拠移転を、どう見ていましたか。
「札幌ドームとファイターズの関係の難しさは、私がホークスで仕事をする前から知っていました。ファイターズにとっては間借りの球場で、1試合あたり数百万円の利用料がかかり、観客が多くなると加算されます。練習での利用料や警備・清掃費、ロッカールームの機材の設置・撤去費なども合わせると、年間20億円以上を札幌ドームに払うことになります。広告や売店の収入も入りません」
「そして、お金もそうですが、とにかく球場をファンサービス向上などのために自由に使えないことに困っていました。『移転』をテコに、好条件を引き出せるのではないかと思っていましたが、札幌ドーム側も譲りませんでした。私は、ここに日本の行政の壁を感じました」
――「壁」ですか。
「札幌ドームに限らず、自治体が所有する公共施設を営利目的のプロスポーツチームに好条件で貸し出すことが、なかなか認められない。それが壁です。草野球の試合なら利用料が数万円でも、プロとなると10倍以上かかるケースもあります。かといって、自前のスタジアムを造ろうとすると建設や維持に多大なコストがかかり、民間企業だけでやるのはとても難しいのです」
米国ではメジャー球団でさえ賃料格安 なぜ?
――プロスポーツチームにとって、どのような活動環境が望ましいのでしょうか。
「米国のプロスポーツチーム…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル