松浦祥子
男性被告(49)が滞在していたラブホテルの一室に令状なしで立ち入り、長時間滞在したのは「プライバシーを大きく侵害する重大な違法行為」――。大阪地裁(佐藤弘規裁判長)はそんな判断を示し、覚醒剤取締法違反などの罪に問われた男性被告に14日、一部無罪を言い渡した。
被告は、大阪府寝屋川市内のラブホテルで昨年8月、覚醒剤や大麻を所持したなどとして起訴された。
検察側は、被告の尿や押収した覚醒剤の鑑定書などを証拠として採用するよう地裁に求めた。一方、弁護側は、違法に収集されたもので証拠能力はないとして、無罪を主張していた。
地裁は9月9日付の決定で、大阪府警寝屋川署の警察官は捜索差し押さえ令状を裁判所から得ないまま、被告が滞在していたラブホテルの一室に約9時間、とどまっていたと認定。ラブホテルは、宿泊していること自体が人に知られたくないプライバシー情報といえる▽被告は当時、警察官の入室を積極的に受け入れていなかった▽覚醒剤の所持・使用の疑いが相当高かったとはいえない――などと判断し、証拠として認めなかった。
この日の判決は、起訴内容は認めるに足りる証拠はなく、犯罪の証明がないと結論づけた。一方、別の機会に被告が覚醒剤を使用した起訴内容は認め、懲役1年6カ月執行猶予5年を言い渡した。
被告の弁護人は取材に対し「裁判所がラブホテルのプライバシー性を重視した点が特徴的だ」と評価した。大阪地検の小弓場文彦次席検事は「判決内容を検討したうえで、適切に対応したい」とコメントした。(松浦祥子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル