聞き手・大滝哲彰
戦時中に「日本軍の慰安婦だった」と名乗り出た一人の韓国人女性の軌跡を描いたドキュメンタリー映画「金福童(キムボクトン)」が5日、大阪市内で上映される。4年前に92歳で亡くなった金福童さん。映画の監督で、韓国の調査報道サイト「ニュース打破(タパ)」プロデューサーの宋元根(ソンウォングン)さん(45)に制作への思いを聞いた。
――映画は、「慰安婦だった」と1992年に名乗り出た後、世界各地で体験を語り、市民葬で多数の市民に見送られた金さんの姿を描いています。どのような経緯で作ったのですか。
「金福童ハルモニ(おばあさん)の短い追悼ドキュメンタリーを作ってほしい」と、元慰安婦支援団体「正義記憶連帯」(正義連)から依頼を受け、ハルモニが亡くなる3カ月前に撮影を始めました。
取材を進めていく過程で私の姿勢は変わりました。短いドキュメンタリーではなく、映画としてハルモニの生き様を残さなければいけないと思ったのです。
慰安婦の問題についてニュースなどで扱ったことはありましたが、特別な関心や責任感は持っていませんでした。日本政府が元慰安婦を支援するための10億円を拠出し、「最終的かつ不可逆的解決」とする文書が交わされた日韓合意が2015年に発表された際も、「やっと解決したんだな」と思ったくらいです。
映画制作の過程で、韓国メディアなどから提供を受けた過去の音声や映像の膨大な資料に目を通しました。そして、今を生きている世代として、この問題をわかっていなかったことを恥じるようになりました。
――金さんは日韓合意をとり…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル