2007年(平19)から10年間、天皇陛下の調髪などを担当する「御理髪掛(ごりはつがかり)」を務め、都内で頭皮ケアサロン「OHBA」を経営する大場隆吉さん(67)は感慨深く即位パレードを迎えた。「陛下のお人柄を現したような穏やかな晴れの日に、パレードでの笑顔を拝見し、国民の1人として、とてもうれしく存じます」。
【別カット】オープンカーから沿道の人々に手を振られる天皇、皇后両陛下
祖父秀吉さん、父栄一さんは昭和天皇の御理髪掛だった。大場さんが東宮御所に出向き、御所改修中は陛下がサロンにお越しになった。大場さんとともにサロンに勤務する取締役の古中(ふるなか)美どりさん(56)は「陛下がいらっしゃる日はいつも晴れていました。『晴れ男ですね』と申し上げると『そうですか。考えたことがなかったです』とおっしゃっていました」と振り返った。
陛下の頭皮に、湿疹の症状がみられたことがあった。大場さんが頭皮に良いシャンプーの仕方をお伝えすると、陛下は「なるほど。このような感じでいいのでしょうか」とまねをされたという。その後、陛下の湿疹は改善された。「有言実行で、いいと思うことは吸収しようとなさるお姿はとても謙虚。誰もが好感を持てるお方と思いました」。
大場さんは陛下への触れ方に心を配りながら、頭皮ケア、カットとシャンプー、肩や腰の、もみほぐしを丁寧に行った。「陛下は優しく分け隔てなく、人として誠実に接してくださいました」。心を込めたケアに、陛下は徐々に自然な会話をなさるようになった。
お好きな曲の1つに石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」を挙げたり、サザンオールスターズのオルゴール曲が流れると「なかなかいいですよね」とお話しされたという。小学生時代、社会科見学でNHKのスタジオを訪問された際、仲代達矢に話し掛けられ「当時ファンでしたので非常にうれしかったです」と明かされた。大場さんは「心に垣根がなく素直なお人柄だと思いました」と振り返った。
皇太子時代から肩が凝っていたり、背中が硬かったりと、もみほぐしに時間が要したという。大場さんは「周囲に配慮される方だけに、さらにお体の負担が増えていくと思います。まずはお体を大事にしていただきたいです」と、陛下の末永いご健康を願った。【近藤由美子】
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