家庭向け電気代の3割ほどを占める託送料金(送電線使用料)には、東京電力福島第一原発事故の賠償費用が2020年度から上乗せされている。これを違法として、福岡市の新電力事業者が国に認可の取り消しを求めた訴訟が22日、福岡地裁で判決を迎える。賠償額が膨らむなか、経済産業省が異論を押し切る形で導入した仕組みを司法がどう判断するかが注目される。
消費者団体など反発 「原発みなに恩恵」と経産省
託送料金は、すべての電力小売事業者が送配電網の使用料として送配電会社に払わなければならない。そこに、原発事故の被災者への賠償費用を上乗せして回収できるよう、経産省は17年に電気料金制度の省令を改正。20年に料金変更を認可した。
国がこの仕組みの導入方針を決めたのは16年12月。標準家庭で月18円程度を上乗せし、40年ほどかけて約2・4兆円分を回収する。
賠償費用は国が立て替える形になっており、それまでは東電と原発を持つ大手電力から回収していたが、賠償額は年々膨らみ、国はこの時点で見込み額を従来より約2・5兆円多い約7・9兆円に引き上げた。想定より増えた分を電気利用者全体に負担させる形だった。
消費者団体などは「とんでもない」と反発したが、経産省は「過去にはみんなが原発の恩恵を受けてきた」などとして導入を進めた。
新電力「原発とは無縁」、「国の決め方おかしい」と提訴
原告の「グリーンコープでんき」(福岡市)は、原発に頼らない電気を届けるため、原発事故後に設立された新電力事業者。各地に太陽光発電所を開設し、16年から電力小売事業も始めた。
その母体のグリーンコープは…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル