弦楽器の音質を左右する表板に奈良・吉野スギ材を使ったクラシックギターを、奈良県御所市のギター工房と奈良県が開発し、23日、県庁で発表した。ギター材に国産スギが使われるのは珍しく、試奏したギタリストは「力強く前に届く」と音質を評価。演奏家や楽器メーカーの評判を得て、奈良県産材の需要拡大につなげる狙いだ。
奈良県森林技術センターが平成27年から弦楽器用材としての活用に挑戦しており、これまでにバイオリン3丁、ビオラ1丁、チェロ1丁を製作した。
御所市柏原でギター工房を運営する丸山利仁さん(64)が7月、同センターのイベントで披露されたスギ材のバイオリンとチェロの二重奏を聴き、透明感と奥行きのある音に感銘。「クラシックギターの表板に使用したい」と同センターに申し出て、楽器用材として最初の民間活用が実現し、乾燥10年以上の樹齢約200年の吉野スギで約2カ月半かけて完成させた。
表板は音を伝える振動体で響板とも呼ばれる。クラシックギターの大半は、欧州産のスプルース(マツ科の針葉樹)か北米産のベイスギで、国産スギは極めて珍しい。しかし、同センターが奈良県産優良スギ材の振動特性を測定したところ、スプルースとベイスギの中間の値を確認。丸山さんも「吉野スギは年輪が詰まっているので強度と粘りがあり、しっかりした音が出せる」と太鼓判を押した。
この日、奈良県庁で試奏した同県王寺町のギタリスト、山本真也さん(26)は「中高音域の響きがよく、立ち上がりが早い。とくにラテン調のテンポの良い曲は気持ちよく演奏できます」と感想を語った。
完成したギターは、11月1~3日に東京で開催される「2019弦楽器フェア」に出品し、試奏や商談が実施される予定だ。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース