2017年春、人生初のマイホームを手に入れた場所は、人やモノの集中する東京都心から直線で約120キロ離れた八ケ岳のふもと、山梨県北杜(ほくと)市だった。都心から2時間ほどでアクセスもよく、小学生のころから林間学校などで幾度となく訪れた憧れの地だ。
日本の空き家はこの20年で1.5倍に増えて846万戸ある。一からつくるのではなく、すでにある資産を生かしたいと考え、探し当てたのは築40年の平屋だった。
この家を案内してくれた不動産屋さんでさえ、「この家は、八ケ岳での田舎暮らしに憧れる人が買う家ではないんですよねえ……」という通り、約70坪の敷地は草ボウボウ、買い手がつかず、2年も空き家になっており、約20坪の室内はすべて畳敷きで、寂れた海の家のような風情だった。
これまで何組か客を案内したが、みな一瞥(いちべつ)をくれて帰ったそうだ。不動産屋さんは「水回りが新しくリフォームされているからきれいですよ」「修繕なしで、明日からでもすぐ住めます」と言う。
うそ偽りなかった。板を張り直した廊下はピカピカでたわみもなく、キッチンは新品と交換されキズ一つない。ユニットバスも新しい。
でも、がっかりだった。
東日本大震災を福島赴任中に経験し、原子力発電所の事故で多くの人の家や土地が奪われる姿を間近で見た記者は、2012年に節電の道を歩み始めました。電力会社との契約を5アンペアに下げ、1カ月の電気代は200円弱。電力会社の電気をほとんど使わないで暮らせるようになりました。その後、結婚し、子どもが生まれたことで節電生活は見直しを迫られましたが、元の電気じゃぶじゃぶ生活に戻るつもりはありません。目指すのは「自然エネルギー100%」の暮らしです。
ひざを抱えないと入れないほど…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル