警察庁は22日、大型トラックの高速道路での最高速度を、現行の時速80キロから同90キロへ引き上げることを決めた。最高速度の変更は初めて。物流の停滞が懸念される「2024年問題」への対策の一つで、警察庁は近く関係の道路交通法施行令を改正し、来年4月からの実施をめざす。
大型トラック(大型貨物と車両総重量8トン以上の中型貨物)の高速道路での最高速度は、1963年に80キロと定められ、変更されてこなかった。
24年4月に運転手の時間外労働が規制されることを前に、政府は23年6月に施策をまとめた。最高速度引き上げはその一つで、警察庁が有識者検討会を設置して議論してきた。
大型トラックには、90キロを超えては走れないようにする速度抑制装置の装着が義務づけられている。全国の高速道路で調査した結果、実際に出している速度(実勢速度)は87キロだった。
検討会での聞き取りで、90キロまでは車両の安全性が保証できるとメーカーから説明があった。検討会は、自動ブレーキなど安全装置が普及していることも踏まえ、「90キロに引き上げても交通安全に大きな影響はない」との提言をまとめた。
警察庁によると、高速道路での大型トラックの人身事故は、07年までの5年間は4037件だったが、22年までの5年間は1927件と半減している。
検討会では、運送事業者から、最高速度の引き上げで運送時間が短縮され、労働生産性が向上するといった意見が出された。一方で、目的地に早く到着しても、荷待ちや荷さばきに時間がかかるため、こうした負荷の軽減を図る必要があるとの声もあったという。
検討会ではトレーラーの最高速度の引き上げについても議論されたが、現行の80キロより速い速度では牽引(けんいん)部分の安全性が確認されていないとして見送られた。(板倉大地)
高速道路での車種別の最高速度
【時速100キロ】
大型バス、普通貨物自動車(1965年~)
軽乗用車、バイク(2000年~)
【時速90キロ】
大型貨物自動車、8トン以上の中型貨物自動車(今後予定)
【時速80キロ】
トレーラー、大型特殊自動車
※()内はいずれも時速80キロから引き上げられた時期
※高速道路の一部区間は最高速度が110キロ、120キロ
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル