大雨で家の中に水が流れ込むと、何が起こるのか。浸水が始まってからでも、上の階に逃げられるのか。そんな実験に、東京理科大の学生が挑んだ。見えてきた教訓とは。
「部屋」の家具が次々浮上
野田キャンパス(千葉県野田市)の実験棟にあるコンクリート製の水槽。4畳半ほどのスペースにベッドやたんす、机といす、冷蔵庫を並べ、ドアも取りつけて部屋に見立ててある。ドアの外側に水を流すと、内側にじわじわと浸入して畳がぬれだした。
この「部屋」は、2018年の西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の住宅を参考につくってある。過去の水害では、2階に逃げることができずに、1階で亡くなった人も少なくなかった。その教訓を対策に生かそうと、二瓶泰雄教授(河川工学)の研究室が取り組む実験に、記者が立ち会った。
「畳、浮いています」。実験開始から2分あまりで声が上がった。水位はまだ、水をかぶった程度だが、内部にすき間が多い畳は浮きやすいのだという。
水位が上がるにつれ、次々に変化が起きた。「ベッドが浮上」「机、浮上」「引き出し開きました」。学生が声を上げ、時刻とともに記録していく。木製のベッドは、下の畳と一体で持ち上がった。数十センチほどの水位になると、いすや机も浮いてきた。
冷蔵庫は後ろ側に傾き、底のほうから手前にせり出してドアをふさいだ。90センチに達すると、たんすが倒れた。逃げ遅れると家具や浮遊物に囲まれてしまうことがよくわかる。
「浸水すると家具が散乱し、避難に時間がかかる。高齢者ではより大変になる」と二瓶さんは言う。「せめて2階で寝るようにするだけでも、救える命はある」
地震対策で使う突っ張り棒などの転倒防止器具には、浸水による家具の転倒を防ぐ効果も期待できるという。
この日の実験には、もう一つの目的があった。この状況から高齢者が抜け出すのがいかに難しいか。学生10人が、浸水した「部屋」で検証した。
■高齢者の体を疑似体験…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル