広島市の松井一実市長は19日、講師を務める市の新規採用職員研修で戦前・戦中の「教育勅語」の一部を引用していることについて、「民主主義的な発想の言葉が並んでいる」などと述べた。今後の研修でも使う考えを改めて示した。
松井氏は、研修資料の「生きていく上での心の持ち方」と題した項目で「先輩が作り上げたもので良いものはしっかりと受け止め、また、後輩に繫ぐ事が重要」と記述。教育勅語の一節として「爾(なんじ)臣民 兄弟(けいてい)に 友に 博愛 衆に及ぼし 学を修め 業を習い 知能を啓発し 進んで公益を広め 世務(せいむ)を開き」との文言を掲載している。
この日の定例会見で松井氏は、教育勅語について「先進国は民主主義を一生懸命広めて国力を増強しているから、日本も追いつかなきゃいけないと思って、そういうコンセプトを書き込んだ」とし、「コンセプトの使い方が、天皇陛下が全部取り仕切るような用語の扱い、構成にしたことで、使い方を誤り、日本が軍事国家になった」との見解を述べた。
その上で職員研修では、戦後の国会で教育勅語の排除が決議されたことに触れた上で、「民主主義を取り込もうとしているといったような内容だから、そういう評価ができるのではないかと、説明している」とした。
今月11日には「教育勅語を再評価すべきとは考えていないが、その中に評価してもよい部分があったという事実を知っておくことは大切だ」とのコメントを出していた。
日本大の小野雅章教授(教育史)は、教育勅語は「天皇と臣民の関係という話を前提としている」と指摘。松井氏が引用する部分も「すべてが命を投げ出し、国家に貢献しなさいという部分にかかるものだ。爾臣民という言葉自体が主権在民にもとる。いいところもあれば悪いところもあると解釈すること自体が成り立たない」と述べた。
19日の会見での松井市長の見解
会見での一問一答の抜粋は以下の通り。
――教育勅語を職員研修で取り上げた経緯と理由は。現行憲法の理念に反するとの指摘もあるが、どう評価しているのか。
市長になって翌年の平成24…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル