相次ぐ私立大学の不祥事を受け文科省が設けた学校法人ガバナンス改革会議が、報告書をまとめた。だが、私大側の反発により、別の会議で議論が続く異例の事態に。改革は進むのか。(聞き手 編集委員・増谷文生、小村田義之)
経営的観点だけは危険、大学自治の尊重を 田中愛治さん(早大総長)
日本の大学進学率は、高度成長初期の1955年は10%程度でしたが、現在は50%を超えています。増えた進学者の多くを受け入れてきたのが私立大学です。日本は私大に依存しながら高等教育を普及させたと言えます。約8割の学生の教育を私大が担う現状は、世界的にもあまり例がありません。
固定資産税などを免除されていることには感謝しています。しかし、学費を一定に抑え、国からの補助金が少ない私大は、課税されれば大半が立ち行かなくなります。私大が消えると大学数も学生数も現在の2割程度になり、国際的競争力を失います。その点を国も理解し、優遇措置を講じているのです。
少数とはいえ不祥事が続き、国民に不信感を持たれていることは承知しています。私大関係者には「日本大学は特殊だ」と言う人がいますが、それは甘い。どの大学でも、悪い人が理事長に就く可能性はあるし、良いと思った人が悪い人に変貌(へんぼう)することもあります。最悪の事態を想定し、それを止める仕組みが必要です。
早大総長の田中さんは、村上春樹氏の講演も引用しつつ改革会議の提案に反論。対して塩崎恭久さんは「いったい誰が理事会のチェックをするのか」と評議員会による監視強化を訴えます。東大大学院教授の両角亜希子さんは、海外の事例からあるべき大学統治の方法を探ります。
しかし、ガバナンス改革会議…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル