山下寛久
愛知県知事へのリコール署名偽造事件で、地方自治法違反(署名偽造)罪で在宅起訴された広告関連会社元社長の山口彬被告(39)=名古屋市昭和区=の判決が12日、名古屋地裁であった。山田耕司裁判長は懲役1年4カ月執行猶予4年(求刑・懲役1年4カ月)の判決を言い渡した。
山口被告の起訴内容は、リコール運動団体事務局長の田中孝博被告(60)=同罪で公判中=らと共謀し、2020年10月下旬、佐賀市でアルバイトに愛知県内の有権者の署名計71筆を書き写させ、偽造したというもの。
検察側は、山口被告がアルバイト集めや作業場所の確保、進捗(しんちょく)状況の伝達などを担ったと主張。山口被告側は起訴内容を認め、全面的に捜査に協力したなどとして罰金刑を求めていた。最終陳述では「たくさんの方に迷惑をかけ、謝罪したい」などと述べた。
リコール運動は19年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」がきっかけ。慰安婦を表現した少女像や、昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品に抗議が殺到。展示内容を批判した河村たかし・名古屋市長と、展示の可否を公権力が判断することは検閲だと主張した大村秀章・愛知県知事が対立した。20年6月、美容外科経営、高須克弥氏(76)を会長にリコール運動団体が発足した。
県内の大半の自治体では同年8月から2カ月が署名活動期間とされ、11月に約43万5千筆が提出されたが、その後「書いた覚えのない署名がある」などの声が相次いだ。愛知県選管が調査したところ、約83%に当たる約36万2千筆に無効の疑いがあったという。検察側が公判に提出した証拠によると、佐賀市での署名の書き写しのアルバイトには同年10月下旬の約10日間に延べ約1千人が参加したという。(山下寛久)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル