大阪府藤井寺市の市立中学校の教科書選定を巡る汚職事件で、教科書会社「大日本図書」(東京)が、教科書の採択に関わる市教育委員2人を飲食店で接待していたことが明らかになった。同社が26日、特別調査委員会の報告書を公表した。
事件では、同社に便宜を図った見返りに現金を受け取り、接待を受けたとする加重収賄などの罪で、市立中学の元校長(61)が25日に大阪地裁で有罪判決を受けた。
報告書によると、元校長に謝礼を渡した同社元取締役(65)と社員(35)=いずれも贈賄罪で略式命令=は2019年7月、大阪市内の飲食店で元校長と教育委員と会食し、代金計約5万2千円を同社で負担した。約3週間後の市教育委員会で小学校教科書の採択が審議され、理科と生活で同社の継続が決まった。
社員は20年7月にも元校長と別の教育委員と松原市内の飲食店で会食し、計約2万6千円を同社で負担。約3週間後の市教委では中学校教科書の採択が議論され、保健体育の継続と、数学の新規採用が決まった。
さらに、社員は教科書を比較する調査員だった藤井寺市立小学校の教諭とも19年5月に大阪市内の飲食店で会食し、代金計約1万8千円を同社が負担した。教諭は元校長の起訴後の昨年11月30日、1人分の約9千円を同社に支払った。
社員は会食の席で、教科書の特徴を説明したり、説明資料を渡したりしていたという。報告書は教育委員らへの一連の働きかけについて、「公平性が影響を受けたことは否定できないが、現実に採択の結果がゆがめられたとまでは認められない」と結論づけた。
報告書の公表を受け、藤井寺市教委教育部の寺田剛理事は「事実であれば、教科書採択の公正性に疑念を生じさせる。あってはならないことだ」と話した。市教委によると、報告書で指摘された教育委員や教諭から「接待を受けた」との申し出はないという。今後、第三者委員会が調査する方向で調整している。
教育委員に「委員に適しない非行がある」と首長が認めた場合、議会の同意を得て罷免(ひめん)できると法律で定めているが、市秘書広報課の担当者は「事実であれば、(接待)行為に至った状況も含めて把握しないと、非行かどうか判断できない。第三者委の調査結果を受けて判断する」と説明した。
また、大阪府の指針は、府立学校の教員らが教科書会社などの利害関係者から接待を受けることなどを禁じている。藤井寺市立小学校の教諭は指針の対象外だが、任命権者は府教委だ。府教育庁の教職員人事課は「事実であれば、何らかの対処を考えたい」と話した。
事件後、市は中学の数学と保健体育で、同社の教科書の使用を新年度から取りやめることを決めた。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル