昨年9月、静岡市の用宗港の一角に1体のモニュメントが完成した。魚と船の帆をイメージしたという金色に輝く作品を作ったのは、スリランカ出身の造形家だ。まさか日本で働くことになるなんて。去年の今頃は、思いもしなかった。
モニュメントは、温泉施設の玄関前に設置された。晴れた日には港の向こうに富士山が見える。人が集う街のシンボルになるように願いを込めて、「親しみやすい魚」と名付けられた。
制作者はディルン・アーシリ・バンダーラさん(29)。用宗港の近く、元は漁師の倉庫だった平屋の一角に即席でつくったアトリエで働く。店舗やオフィスを設計する建築事務所で、内装デザインや企業エントランスに置くマスコットの彫像などを担当する。
昨年2月、来日したのは妻の卒業式に出席するためだった。スリランカの大学で後輩だったキトゥ・ミニ・ジャヤティラカさん(27)と結婚したのは2019年。幼い頃に見たNHKの連続テレビ小説「おしん」でひたむきな日本人にあこがれた妻は、「いつか日本で仕事がしたい」と大学で言語学を専攻。さらに日本語を学ぶため、日本の語学学校に留学していた。
ディルンさんは大学を卒業後、スリランカでフリーのインテリアデザイナーとして働いていた。仕事は順調だったが、結婚したばかりの妻と離れて暮らすのは耐えがたかった。
自らが日本で働くことは難しか…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル