共同訓練などで日本を訪れたオーストラリア軍には、日本の検疫法令が適用される――。そんな条項が、1月に署名された日豪円滑化協定に盛り込まれた。日米地位協定のもとで、新型コロナの水際対策が米軍まかせになっているのとは対照的だ。日米間でたびたび問題になってきた容疑者の身柄の扱いなども、日豪協定では改まった。二つの協定の違いから、何が見えるか。
日豪円滑化協定と日米地位協定はどちらも、外国軍隊の法的地位や出入国手続き、課税の扱いなどを定めている。構成や条文はそっくりだ。日豪協定は名称にこそ「地位協定」と掲げていないが、2条で「地位を定める」とうたう。
2条 この協定は訪問部隊及び文民構成員の地位を定めることにより、当該防衛協力を円滑にすることを目的とする。
■日米地位協定にはない項目
一方、日米協定が米軍のみを対象とし、対日防衛義務を負う米軍が駐留する前提なのに対し、日豪協定は共同訓練や災害救援などで互いの国に一時滞在することを前提としている。同じ条文で自衛隊とオーストラリア軍の双方がしばりを受けることの意味は大きい。
日本(接受国)に来た豪軍(訪問部隊)は何を許され、何を禁じられるのか。
軍用機や艦船、車両などでの移動について定めた5条には、日米協定にない項目がある。
5条3項 接受国は国内の移動に制限を課し、並びに特定の区域、空間及び施設へのアクセス並びにこれらのものの通過を禁止することができる。
外国軍隊の移動の可否は必要に応じて考えられるべきで、無秩序に移動することは認められない、と担当する外務省大洋州課は説明する。
■「郷に入っては郷に従え」の属地主義
だが日米協定には、移動の制限に関する規定がない。その結果、米軍は各地で低空飛行訓練をおこなっている。1999年、低空飛行訓練では原発や民間空港の上空を避け、病院や学校に米側が「妥当な考慮を払う」とする合意が結ばれたが、禁じる仕組みはない。
両条約の差をどう考えればいいのか。
大洋州課は「協定にどんな条文を入れるかは、相手国との交渉で決まっているとしか言えない」という。
検疫について定めているのは、日豪協定の6条。出入国の手続きに関する条文のひとつだ。
6条7項 接受国への訪問部隊の入国については、全ての場合において、バイオセキュリティ及び検疫に関する接受国の関係法令を適用する。
日本を訪れた豪軍には日本の…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル