ヤマメやイワナ、アユが生息し、全国から釣り人が訪れる本州最北部の清流・大畑川。とくに中流域は大物が釣れる人気ポイントだが、昨夏の大雨被害で土砂が流れ込み、今シーズンは調子が悪い。元に戻るには数年かかる見通しだ。
大畑川は青森県の下北半島北部、むつ市を流れて津軽海峡にそそぐ、全長31・6キロの渓流だ。
昨年8月、局地的な大雨に見舞われ、中流域では土砂崩れが相次いだ。今年4月に渓流釣りが解禁され、例年ならイワナやヤマメ釣りのピークを迎えている6月上旬、フライフィッシング歴50年近い地元カメラマンの川島明さん(68)とともに大畑川に向かった。
足を踏み入れたのは薬研温泉の下流、薬研橋近く。ユスリカなどヤマメが好む昆虫が舞う絶好のコンディションに、川島さんは「30センチを超す大物が釣れそうな気配がする」とフライロッドを振った。だが、フライに反応するのは、春に放流された体長5センチ程度の稚魚ばかり。小さすぎてフライをくわえることすらできない。
沢沿いの斜面が崩れ、倒木が土砂に埋まっている。堆積(たいせき)した土砂が流れをせき止め、沼のようにぬかるんだ場所もある。「川の形が変わってしまい、居着いていた大きな魚がいなくなっていた。川底の石につく、餌となる水生昆虫も極端に小さい」。川島さんは表情を曇らせた。
昨夏の大雨被害について、大畑川を管理する県下北地域県民局の本間康弘・河川砂防施設課総括主幹は「これだけ大量の土砂が流入した経験はない」と振り返る。
大畑川に漁業権を設定する大畑町漁業協同組合によると、魚が居着くはずの川底の石が流され、平坦(へいたん)な流れになってしまっている。被害の大きい中流域は、川底に堆積した土砂が押し流されるまでに、数年かかるとみている。(福地慶太郎、安田琢典)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル