横浜市の林文子市長(73)が22日、カジノを含む統合リゾート(IR)の誘致を正式表明した。人口減、税収減、厳しい財政状況など「横浜の将来への危機感」を決断理由に挙げたが、林氏は2年前の市長選で「白紙」を掲げて再選しており、反対を訴える市民約40人が市長室前に駆けつけ、市役所は2時間にわたって大混乱した。23日にはカジノ反対派の「ハマのドン」藤木幸夫横浜港運協会会長(89)が会見する。
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林市長がIR誘致についての会見を終えた午後3時半、JR関内駅前や市役所前で署名活動をしていた市民約40人が5890人分の反対署名を渡そうと市長室へのエレベーターホールに集まった。ただの誓願だったが、市の対応のまずさが加わって不穏な空気が高まった。
市長は2年前、IRについて「白紙」を訴えて再選した。7月まで「判断材料がそろっていない」と答えていたが、この日、「7月末に決断した」と突然誘致を表明。市民は「18区中4区でしか住民説明会をしていない。それも9割は反対だ」と訴え、「カジノNO」のプレートを掲げた。
IRを担当する政策局の職員との押し問答が1時間にわたって続いた。市は政策局長が署名を受け取ることで収束を図ろうとしたが、一層混乱。怒号が飛び、集団で市長室に突入を図ろうとする動きにまでエスカレートした。仲介に入った市議が市と対応を協議したが、林市長は「会いたくない」と拒否。2時間後の午後5時半、副市長2人が代理で抗議文を受け取り、市長が後日、回答することでようやく解散した。反対署名はいったん持ち帰り、市長に手渡す方法をあらためて協議することになった。
記者会見でも「白紙」から誘致に転じた理由について質問が集中した。林氏は<1>2019年をピークとした人口減少<2>消費・税収の減少による厳しい財政状況などを挙げ「(IR誘致は)一切やりませんとは言っていない。どちらか決められないとして『白紙』申し上げてきた」と釈明。「『裏切れた』と思う方もいるかもしれないが、裏切った気持ちはない」と話した。
「住民投票」を問う質問は「IR整備法では住民の意見を反映させるさせる方法は、公聴会と議会。考えておりません」と一蹴。「18区全部回ってまず丁寧に説明したい」と繰り返した。突然の決断の背景として横浜選出の菅義偉官房長官の関与を疑う声には「会っていません」と否定した。
誘致先にしているのは横浜を代表する観光スポット山下公園に隣接する山下ふ頭。東京ドーム10個分のスペースに港湾事業者の倉庫などが立ち並ぶ。港湾事業者の中心にいるのは横浜スタジアム会長も務める「ハマのドン」藤木会長だ。林市長の支援者だが、ギャンブル依存症への懸念からカジノ反対。立ち退き要請には応じないとしている。【中嶋文明】
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