ここ数年、雨の降り方は明らかに変わった。「50年に一度」も、もはや珍しくはない。今年7月、そんな豪雨が再び列島を襲った。7県に大雨特別警報が出され、熊本県では日本三大急流の一つ・球磨川が氾濫、各所で水位が過去最高を記録した。流域は広範囲にわたって浸水、多くの人たちが取り残された。 【映像で見る】『守りたい 守れない ~気候危機のただ中で~』 球磨川に寄り添うように225世帯が暮らす球磨村の神瀬地区も、壊滅的な被害を受けた。生まれ育ったこの地区に住みたいとの思いがある一方、激甚化する災害に「再び同じような雨が降ったら命を守ることができるだろうか」と葛藤する住民たち。(熊本朝日放送制作 テレメンタリー『守りたい 守れない ~気候危機のただ中で~』より)
■安全な場所はほとんどなかった
命の危機に晒された地元消防団の副団長を務める上蔀忠成さん(46)は、「いつもだとゆっくり溜まる感じですけど、水位の上がり方が半端ではなく速かったんです」と振り返る。 当時、避難所には高齢者や4カ月の赤ちゃんもいた。危険と判断した上蔀さんは自宅へ誘導。周辺の平屋の家は完全に水没、自宅の2階にも水が迫る中、消防団の仲間を見つけ、高台の保育園のプールをボート代わりに、妻と子どもを含め17人を救出した。最終的には近隣住民45人を何とか助けることができたものの、神瀬地区では3人が命を落とした。
7月4日未明から8時間にわたって降り続いた激しい雨は各地点で最大の降水量を更新。冠水や崩落で孤立した村役場も、屋外の施設に本部を設けて災害対応をするしかなかった。 住民福祉課長の大岩正明さん(51)は、冠水で役場に行くことができず、避難所対応に当たった。「千寿園で助けが必要だとの連絡が住民の方にありまして、私も一緒に行きました」。
自身の母も入所していた特別養護老人ホーム千寿園は1階部分が水没。大岩さんは職員らと協力、70人の入所者らを2階に避難させようとしたが、球磨川とその支流は急激に増水、14人の命が失われた。 「何とか浮いている物に乗せたいと、入居者の方を抱えて必死の思いでやったんですけど、バランスがとれないんですよ。乗せようとしても、すぐひっくり返るんです。とにかく(水面から)頭だけは出そうということで、ボランティアの方も職員の方も、必死で守ったんですけども…」(共に救助にあたった小川俊治さん) 大岩さんも、「抱えているお婆ちゃんと一緒に沈んでしまうのかな、という気もしたのは事実です。自分は生き残りましたけど、近くにいた母のことは助けてやれなかった」と話す。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース