新型コロナウイルス感染拡大による長い自粛の中、経済活動の再開も重要な課題になっている。感染拡大の防止との両立に向け、政府は経済の専門家からの意見も聞いていく方針を出している。
菅官房長官は5月11日、新型コロナウイルス対応のため、政府が設置した「基本的対処方針等諮問委員会」に経済の専門家を加えることを明らかにした。これまで諮問委員会は感染症関係の専門家が中心だったが、今後への備えを固めると同時に、社会経済の活動レベルを上げて日常生活を取り戻すために、経済社会の影響に見識の深い専門家からも意見を聞く。諮問委員会に加わるのは、慶應義塾大学の竹森俊平教授ら4人で、緊急事態宣言の一部解除を見据え、今後の課題となる感染拡大防止と経済活動の両立について見解を求める目的だ。
経済の専門家は、当初予想されていた短期間での抑制から長期間の抑制になったことで、いろいろな観点での議論が必要だと指摘する。新型コロナウイルスが経済に与える影響について分析を進めるMCPチーフストラテジスト・嶋津洋樹氏は「これまでの店に対する休業や自粛といった供給側への要請だけでなく、需要側である消費者の行動にも影響を与える対策が有効なのではないか」と提言した。
慶應義塾大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は、諮問委員会に経済の専門家が加わることに対して「休業要請前の、もっと早い段階で入ってほしかった。今後は、医学、経済の問題だけじゃなくて人間社会に関わる問題でもあるので、人間の行動や気持ちに関する専門家も必要ではないか」と語った上で、様々なものが緊急事態宣言の解除によって「再開」となる前に、「再考」という言葉への意識を求めた。
再開という言葉は「一般的に止めていたものを元に戻す、一時停止していたものをそこから再開するという意味」であることから、自粛明けに「再開」と聞くと、コロナ禍前に戻ることをイメージしてしまう人も多いだろうが、「大切なのは前に戻して再開するのではなくて、変えるべきはどう変えて、見直すべきはどう見直すか。再開するというより、もう一回考え直す、例えば、社会『再考』ぐらいの言葉を使った方がいい」と述べた。
家で仕事をする「テレワーク」、満員電車の混雑緩和を求めた「時差通勤」など、新型コロナウイルスの感染拡大より前から「変わったほうがいいよね」という議論がされていたものはいくつもある。これがコロナ禍によって、余儀なく前に進む格好にもなった。「ウイルスのことに関係なく、これをきっかけに、これからも取り入れていけるものは、それこそ再考すべきだと思う。学校教育の問題でも、ウイルスがなくなったからといって元通りにすればいいというものでもない。学び方の多様化だったり、教室の在り方を見直していこうというのは10年、20年とあった」。学校に通えないような子どもへのオンライン授業など、教室という場所に制限され学び方を取り入れていくことができれば、教育も進歩・進化したものになる。
また、職場か家かといったテレワークに限らず、働き方についても「果たして8時間勤務というのが正しかったのかとか、9時から18時まで働くのがベストなのかとか、働き方の『型』を、多くの人が見直せるのでは」と期待もかけていた。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)
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