根岸拓朗
職場で民族差別的な文書を繰り返し配られて精神的苦痛を受けたとして、在日韓国人の女性が、東証プライム上場の大手不動産会社「フジ住宅」(大阪府岸和田市)側に賠償などを求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は8日付の決定で、会社側の上告を退けた。同社と今井光郎会長に132万円の賠償と文書の配布差し止めを命じた二審・大阪高裁判決が確定した。
フジ住宅は2013年以降、韓国人や中国人を侮辱・中傷するネットや雑誌などの記事のコピーを、職場で繰り返し配布した。従業員の女性が提訴すると、提訴を非難する社員の意見を載せた資料も配った。
昨年11月の二審・大阪高裁判決は、文書にはヘイトスピーチにあたる差別的な言動が含まれると指摘。「職場での配布を正当化する理由は見当たらない」としたうえで、「『朝鮮民族はすべてうそつき』といった意識を醸成させ、現実の差別的言動を生じさせかねない温床をつくりだした」と会社の対応を批判した。
原告の女性は最高裁の決定を受け、「(会社には)謝罪と、職場での人との関係を回復できる環境をつくってほしい。(裁判が)一人一人が尊重されて働くことができ、多様性が当たり前に大切にされる社会の実現の後押しにつながればうれしい」とする談話を出した。(根岸拓朗)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル