西岡矩毅
多発するニセ電話詐欺の被害を減らそうと、九州産業大学(福岡市)で臨床心理やデザインを学ぶ学生と福岡県警がタッグを組み、「電話対応ハンドブック」を作った。警官が示した原案を、学生のアイデアで親しみやすく生まれ変わらせた、その中身とは――。
県警の要請に応じて協力したのは、人間科学部臨床心理学科と芸術学部ビジュアルデザイン学科の3年生4人と、大学院生1人の計5人。詐欺を見抜くためのチェックリストや警察に通報する時に伝える内容などを盛り込むハンドブックの表現を練り上げた。
作業は5月にスタート。県警側が「被害にあわないための4箇条」として当初示したのは、「理解する」「信用しない」「お金の話は詐欺」「すぐに相談」という文言。これに対して、心理学専攻の学生らが「四つは多い」「『信用しない』と否定する言い方は頭に入りづらい。『○○しましょう』と提案する方がいい」などと注文。協議の結果、完成品は「詐欺対策3ケ条」で、「理解しましょう」「疑いましょう」「落ち着きましょう」となった。
芸術学部の学生らはデザイン面で意見を出した。その一人、本告優人さんは「字が多いと分かりづらい」「丸みがあるデザインの方が親しみやすく、手元に置いてもらえる」と提案。完成品では、注意を引きつける黄色を背景に採用し、一目でわかるピクトグラム(絵文字)も使うことになった。
作業を終え、臨床心理学科の亀山ひかるさんは「納得できる仕上がり。祖父母にも渡したい」。県警生活安全総務課の谷川亨課長は「我々が作ると、紋切り型で堅くなってしまう。注意を投げかけられる、良いものができた」と喜んだ。
県警によると、今年1月~10月末までに県内で起きたニセ電話詐欺の認知件数は466件(前年同期比183件増)で、被害額は9億1千万円(同2億2千万円増)。そのうち、半数以上の317件の被害者は65歳以上の高齢者で、被害額は全体の8割以上にあたる7億6千万円にのぼった。
完成したハンドブック(A4判、6ページ)は9万部を用意。今後、各署や年金事務所などで配布し、警官が地域を巡回する時にも配る予定という。(西岡矩毅)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル