帰国したベトナム人の住民票が悪用され、軽乗用車が不正に名義変更された事件に絡み、愛知県津島市が「国外への転出届が出ている人名義の変更の届け出が受理されている」と軽自動車検査協会側に伝えていたことがわかった。同市幹部が朝日新聞の取材に明らかにした。だがその後も状況は変わらず、申請が受理され続けたという。
捜査関係者によると、問題となった名義人はベトナム人女性。女性の帰国後に届け出された車は44台に上るといい、県警は協会側の対応の甘さが不正の背景にあったとみて調べている。
軽乗用車を巡っては、自動車税は名義人が住む市町村が徴収し、名義変更は「軽自動車検査協会」(本部・東京都新宿区)の各事務所や支所が請け負う。市町村は同協会側から名義変更の情報を受け、これをもとに年に1度納税通知書を送付している。
津島市税務課によると、7~8月に同協会愛知主管事務所(名古屋市)から提供された名義変更の情報を精査したところ、国外への転出届が出ている元住民のものが含まれていることがわかった。同課職員が協会側のコールセンターに電話し、職員であることを伝えた上で事情を説明。「届け出を止められないか」と問い合わせた。
だが、協会側から「書類に不備がなければ受理する」と説明され、その後もこの名義人の届け出が受理され続けたという。
担当者「情報提供を受けた事実は確認できず」
捜査関係者によると、名義人の女性がベトナムに帰国したのは6月。その後、計44台分について女性名義で変更届が提出されたことを県警は把握している。
同協会愛知主管事務所の担当者は朝日新聞の取材に「(津島市から)そういった情報提供を受けた事実は確認できなかった」と回答。変更届と添付の住民票やそのコピーの内容に不備がないかを確認できれば受理する運用だといい、一般論として「自治体から情報提供があったとしても、届け出を拒否できる形になっていない」と説明した。
一方、同市は来年4月に納税通知書を送付する際、この女性名義のものは徴収できないとして対象から外す方針という。
この事件では、帰国したベトナム人男性の名義で軽乗用車1台分の名義を不正に変更したとして、ベトナム国籍の男(31)が電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで逮捕された。この男性名義で29台、今回の女性名義で44台、別のベトナム人男性名義で7台と計80台分の名義がいずれもそれぞれが帰国後に不正に変更されたことがわかっている。(国方萌乃、奈良美里)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル