中山直樹 安田朋起
家庭向けの電気料金に含まれている「託送料金」(送電線使用料)に東京電力福島第一原発事故の賠償費用が上乗せされているのは違法だとして、福岡市の電力小売事業者が訴えた行政訴訟で、福岡地裁(林史高裁判長)は22日、原告の訴えを退ける判決を言い渡した。
託送料金は、すべての電力小売事業者が送配電網の使用料として送配電会社に支払っているもので、一般家庭の電気代の3割ほどを占めている。経済産業省は2017年、この託送料金に原発事故の被災者への賠償費用を上乗せして回収できるよう省令を改正し、20年に認可。約2・4兆円を40年ほどかけて回収する運用が、同年から各電力会社で始まった。
これに対し、新電力事業者「グリーンコープでんき」(福岡市)は20年10月、九州電力送配電に対する料金変更認可の取り消しを求める訴訟を起こした。
訴状によると、この仕組みには法的な根拠がなく、省令で決定されたことは違法だと主張。賠償負担金は送配電事業に必要な経費ではなく、託送料金に含めるのは電気事業法に反しているなどと訴えた。
国側は、「広く公平に負担すべき公益的課題の費用を託送料金に含めることは、電気事業法の趣旨に沿う」などと反論。託送料金の変更は国が送配電会社に認可したもので、小売業者である原告には訴訟を起こす資格がないとも指摘していた。(中山直樹、安田朋起)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル