戸田拓
松山市の道後温泉にあるモニュメント「坊っちゃんカラクリ時計」の音を巡り、近くの住民から「音が大きい」と苦情を受け、管理する市が音量を下げる事態になっている。一方で、観光客からは「音が小さくて聞こえない」との声も寄せられてきた経緯もあり、市や地元の観光関係者は対応に苦慮している。
カラクリ時計は、道後温泉本館建設100周年の1994年、市が道後温泉商店街の入り口に設置した。午前8時~午後10時の1時間(土日祝日などは30分)ごとに、本体部分が高く伸びて開き、中から夏目漱石の小説「坊っちゃん」のキャラクター人形が現れて楽曲に合わせて動く。
市観光・国際交流課によると、苦情を受けて時計周辺の音量を計測したところ最大74デシベルだった。そこで市は県公害防止条例が規定する拡声機の上限値70デシベルを参考に、6日から最大で69デシベルに収まるよう、ひとまず下げた。反響を踏まえ、今後の対応を検討するという。
市には「聞こえづらい」との声も以前あり、3年前には音量を上げる調整もしていた。遠隔で音量を変えられる仕組みはなく、調整のたび業者に発注が必要という。環境省の示す目安では、70デシベル超の音は幹線道の周囲(昼間)や在来鉄道の車内、セミの声を例に挙げている。
友人とカラクリ時計を見て楽しんでいた札幌市の大学生飯田璃咲さん(21)は「車が通ると音が聞こえにくかった。混んでいる時間はもっと音量を上げてもいいのでは」。ボランティアガイドを長年している田鶴谷茂雄さん(78)は「騒音に聞こえるという話は初めてでビックリ。音が気になる人のことを否定はできないが残念です」と話した。
カラクリ時計は夜10時まで音が流れ、周辺にはマンションもある。道後温泉旅館協同組合には、「窓を開けられない」という苦情が夏場にあったが、「音量が小さすぎて聞こえない」という観光客の声も寄せられているという。
越智英幸事務局長は「近隣の方の意見もわかるが、観光の目玉コンテンツとして理解いただければ。市役所が音頭を取って住民も含めた調整の場をつくってほしい」と話す。(戸田拓)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル