「賛成・反対の対立構造では進まない」。夫も妻も、それぞれの姓のまま結婚できるよう選べる「選択的夫婦別姓」の導入を求めているサイボウズの青野慶久社長。訴訟の原告になったほか、議員向けの勉強会でも法改正を訴えていますが、5月に都内であったイベントで、「無関心が当たり前」とも指摘しました。「お互いに正しい知識を共有しましょうという姿勢が大事」と話す青野さんの思いを紹介します。
【イラスト解説】夫婦別姓、相手が外国人だとOK? 現在の制度は
▼▼イベントは5月31日、withnewsでの連載をまとめた『平成家族』(朝日新聞出版)の出版を記念して開かれました。
連載「平成家族」では、多様な生き方や働き方が広がる中で、昭和の価値観と平成の生き方のギャップに悩む人びとを紹介してきました。
経営者として発信し、育休を3回とって、選択的夫婦別姓の訴訟原告としても活動する青野さん。会場には、「令和」の多様な家族のあり方や働き方を考えようと、様々な問題意識をもった参加者が集まり、フロアから活発な質問もありました。テーマごとに3回に分けて報告します。▲▲
旧姓を使い分ける大変さ 別姓も認めて
――夫も妻も、それぞれの姓のまま結婚できるようにする「選択的夫婦別姓」。青野さんは訴訟の原告になりました。
外国人と結婚したら、別姓の夫婦でいることも選べるのに、日本人同士の結婚では別姓は認められない。今回の訴訟は、そんな法律の穴を突いた訴えになっています。
――旧姓の「青野」を通称名として活動していて、どんなところに困っているのでしょうか。
改姓はこまごました手続きが本当に大変でした。
パスポートは戸籍名の「西端」。アメリカに出張したとき、ホテルにチェックインしようとしたら「予約がない」と言われて、「先方が『青野』でとったのかもしれない」と確認してもらうと「青野ならある」と。
でも「お前が青野だと証明せい」って言うんですよ。いや、青野ですよ。小さな頃から青野なんですけど。財布ひっくり返して、解約予定だった旧姓のクレジットカードを見せて事なきをえたんですが、名前を使い分けるって結構大変です。災害時や給与明細、いろんな時に「二重管理」が必要になっています。
――しかし、訴えは東京地裁で棄却されました。
まだ地裁ですからね、諦めていませんよ。これまで別姓に大反対していた稲田朋美さんも「通称と戸籍で名前2つ持っていると社会が混乱する」と主張が変わってきました。「やっと気づいたか…!」という思いですが(笑)。
地方議会から国会への意見書を出して、国会議員を動かそうという「全国陳情アクション」も活発になっています。正しい知識を身につけて、多くの人が発信すればするほど世の中は動きます。
――選択的夫婦別姓への理解をどう広めていこうと考えていますか?
最終ゴールはハッキリしています。立法で法律を変えていく。国会議員が権限を持っているので、彼らをいかに動かすか。議員は選挙で選ばれるので、賛成している人だけを選べば変わるはず。その前の段階で世論を動かさないといけないと活動しています。
そして、司法からいくという裏技ですね。裁判所には「違憲立法審査権」がありますので。この両輪をまわそうとしているところです。
――「別姓の夫婦」という選択肢を増やすだけなのに、反対する人をどう受け止めていますか?
実は、反対する人がいて当たり前だと思っています。
世の中にはいろんな人がいますから、「別姓に変えたい」「変えたくない」「制度の変化がどうしても受け入れられない」という人がいても、違和感はありません。ただ、理解を得られるように知識を共有しながら、なんとか立法できればと思います。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース