日が暮れる頃、日比谷公園(東京都千代田区)の小音楽堂に、スーツ姿の会社員やダウンジャケットを着た若者らが、少しずつ集まってきた。阪神・淡路大震災から28年が経った17日。関西出身者を中心に約100人が集い、キャンドルに火を灯(とも)し、震災の発生時間から12時間後の午後5時46分に黙禱(もくとう)を捧げた。
主催したのは、毎年この日に神戸市で開かれる「1・17のつどい」の実行委員会。関西出身者が多い東京でも集いを開いてほしいとの声があり、「東京会場」として2019年から追悼行事が始まった。21、22年は新型コロナの影響で中止し、開催は3年ぶり。実行委員長の藤本真一さん(38)は「年に一度でも『記憶のスイッチ』を押す場所があれば。語らいの場をなくさないようにしたい」と話す。
仕事を終えて参加したという不動産会社員の武本翼さん(34)は、6歳の時に神戸市長田区で震災に遭った。「就職で東京に来て以来、この日は毎年、一人で当時を思い出すだけだった。こういう集まりがあるのはうれしい」。
ネットを通じて集いを知り、19年に続き参加した会社員女性(57)は、半日休を取った。家族と神戸市西区に住んでいた女性は、震災の4カ月前、転勤で東京に移った。家族は無事だったが、いまだに当時の映像を見ると涙が出る。「両親は当時のことを積極的に話したがらない。私は、その時いなかった負い目からか、忘れちゃいけないという思いが強いのかもしれません」。28年余り東京に住んだが、定年後は神戸に戻ろうと考えているという。(小林恵士)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル