メガバンクの為替取引担当から転身
「銀行員として経済指標の分析や国力比較を自分なりに行っていましたが、日本の経済はここ数十年、明確には上向いていないと感じています。『このままだと日本の立ち位置はどうなってしまうのか』と感じており、少しでも直接的にアプローチすることはできないかと思っていました」 防衛省整備計画局・情報通信課に2020年8月に配属された佐藤仙一さん(33)は、メガバンク出身の元銀行マンだ。 東京大学大学院理学系研究科で、銀河を観測し、星の運動や分布を研究。卒業後はメガバンクに就職し、都内の支店での法人営業を経て、本社で為替取引などを担当した。 特に転職は考えていなかったが、新聞で防衛省中途採用の記事を読んで興味を持ったという。 「国防の観点から、サイバー・電磁波・宇宙の分野などで人材が求められていると書かれていました。宇宙に関わる仕事ができるかもしれないと思い応募しました。銀行では情報収集が大事な仕事で、日本の国防について漠然と不安に感じていたことも応募の動機です。採用面接では、日本の周辺で有事が起きた場合について意見交換したのが印象的でした」
年収の減少は「覚悟した」
メガバンクから防衛省に転職し、年収は「減少を覚悟した」という。しかし佐藤さんは「給与だけでなく、自分のやりたいことをやるのが一番だと思った」と話す。 「メガバンクから他に転職する人は珍しくありません。先のことを考えると、メガバンクでも上のポストに昇進できる機会が十分にあるわけでもありませんし、積極的にチャレンジしている同期の中には、外資系銀行やコンサルに行く人もいました」 佐藤さんが防衛省に入省してからまだ数カ月だが、同じ大組織ながらメガバンクと防衛省の違いを実感している。 「メガバンクでは同業他社が明確にいて、お客さんの取り合いがあるので、大きな組織といっても、それなりのスピードで意思決定が求められました。一方で行政機関では競合がいないこともあってか、重要な話に関して、意思決定までにじっくり時間をかける必要のある案件が少なからずあります」 佐藤さんは現在、サイバー防衛に関する部署で働いている。 「自分のスキルを生かせればと思っています。宇宙に関する仕事に興味がありますが、それにとどまらず広く国防に関わっていきたい」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース