京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)に放火して36人を殺害したなどとして、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)に対し、京都地裁は1月25日、死刑を言い渡しました。青葉被告は2月7日付で控訴し、裁判は大阪高裁で続きます。 このような事件の再発を防ぐために、私たちにできることはあるのか。筑波大の原田隆之教授(犯罪心理学)に聞きました。 ◇ 「社会的背景」よりも この事件に関しては、青葉被告の不幸な生い立ちや環境の要因ばかりがクローズアップされています。判決を受けての識者の声もそれを強調するようなものばかりでした。たしかに、青葉被告が不幸な家庭環境で育ったことは、事件の要因の一部ではあると思います。 私も以前に他のメディアの取材に対して、京アニ事件は本人の孤立やパーソナリティー(人格)の影響が大きいとコメントしたことがあります。 でも、裁判を通じて見えてきたのは、精神鑑定を通して、妄想的な思考を中心とする精神障害が犯罪の動機に大きな影響を与えていたということでした。 青葉被告は、京アニの女性監督とネットでやり取りして恋愛しているという思い込みをし、自作の小説を京アニに盗まれたと主張していました。また、常に「ナンバー2」と彼が名付けた得体(えたい)の知れない人物から監視されていたとも主張しています。そういった妄想的な思考は、事件の前後を通してまったく揺るがず、このような思考がなければ、これほどの事件が生じることはなかったと思います。 個々の研究ではなく、たくさんの研究を統合して何を言えるかを分析する手法を「メタ分析」と言います。犯罪のリスク要因のメタ分析を見ると、家庭や学校や職場など、社会的な関係が希薄で、充実した生活を送れていないことが、犯罪のリスクだと指摘する分析はたくさんあります。この事件の背景にも、こうした要因をいくつも指摘できることはたしかです。 たとえば、青葉被告は妄想が深刻になる前に、下着窃盗やコンビニ強盗を起こしていました。人に恨みを抱きやすかったり、粗暴だったりといった反社会的な傾向があったのだと思います。本人の価値観やパーソナリティーに妄想的な思考が前面に出る前から反社会的な傾向があり、こうした要因に精神障害が組み合わさって、今回の事件に至ったとみるべきです。 ここで注意すべき点は、精神障害自体が単独で犯罪の原因になることはほとんどないということです。被告が従前から有していた反社会的パーソナリティーなどの犯罪のリスク要因、彼が置かれた環境の要因、それらに加えて精神障害が影響を及ぼしたという理解が重要です。 したがって、本人にも責任はありますが、精神障害の影響による部分も考慮される必要があったのではないかと考えています。この点は、精神鑑定でも意見が分かれていましたが、判決では「完全責任能力あり」という判断となりました。 もちろん、戦後最悪の被害者を出した重大事件であること、被害者や遺族の心情、社会に与えた影響の大きさなどを勘案することはきわめて重要です。しかし、それと同時に専門家による精緻(せいち)な精神鑑定の結果も十分に考慮されるべきだったと思います。 「無差別殺傷事件」に共通項はあるのか 京アニ事件のような無差別殺傷事件全般を引き起こすリスク要因とは何なのか。科学的に導き出すことは、おそらく不可能です。 なぜなら、無差別殺傷事件は極めてケースが少ないからです。一つ一つを個別に見て、それぞれのケースにこういう事情があったと言うことはできますが、数が少なければ、全般的な知見を導き出すことは難しいと言わざるを得ません。 貧困家庭で育っても、虐待を受けて育っても、普通は無差別殺傷事件を起こしません。 秋葉原で無差別殺傷事件を起こした加藤智大元死刑囚の場合、雇用の状況が事件に影響した面はあるでしょう。 でも、格差社会の中で、彼のような待遇の人はたくさんいると思います。その人たちがみんなあのような事件を起こすかというと、そんなことはありません。 加藤元死刑囚の中に反社会的なパーソナリティーがあって、環境的な要因との掛け算で、ああいう事件を起こしたのではないかと私はみています。 だからといって、同じことを青葉被告に言えるとは限りません。秋葉原事件の分析は、秋葉原事件だけの分析に過ぎないのです。 どうすれば事件を防げるか それでは、京アニ事件のような事件は、どうすれば防げるのでしょうか。 青葉被告が事件前に置かれていた状況を考慮すると、雇用対策や孤立防止は徹底的にやるべきです。でも、そのような支援だけで京アニ事件を防げたかと言えば、防げなかっただろうと私は思います。 この事件は、繰り返し述べたように、精神障害が動機に与えた影響が大きかったとみています。 まず必要なのは、精神障害を持って孤立している人への支援です。青葉被告は事件前の長い期間、服薬をやめていました。もし彼に家族や親密な関係の友人がいたなら、彼の精神状態を懸念し、服薬を続けるように説得することもできたでしょう。やはり孤立対策は、このような事件においても重要です。 児童8人が殺害された2001年の「大阪教育大学付属池田小事件」の反省として、かつて開放されていた小学校は、部外者が入れないように物理的な対策を講じました。 それと同じように、今回の事件からも学べることはあります。ガソリン対策です。 ガソリンには大きな殺傷力があり、大惨事を招きます。 青葉被告は法廷で、ガソリンを使った理由について、2001年の消費者金融「武富士」弘前支店で5人が死亡した放火殺人事件などを参考にしたと語りました。 京アニ事件の後、総務省消防庁は省令を改正し、ガソリンを携行缶で購入する際には本人確認や使用目的の確認などを義務づけました。 このような対策を考えることが、同種の犯罪を防ぐのに効果的ではないでしょうか。 京アニ事件のような事件を、どうすれば防げるのか。無差別殺傷事件全般に話を広げても、有効な対策は打てないと思います。一つ一つのケースを個別に見るしかないのです。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「赤チン」の製造会社はいま… 千歳烏山で見つけた「昭和の原風景」
気温は6度。まだまだ寒い2月上旬、京王線千歳烏山駅(東京都世田谷区)に来た。沿線に住んでいるのに、あまりなじみがなかった。せっかくなら楽しく歩きたい。中学・高校の同級生で、偶然にも今は同じ会社の同じ部署で記者をしている「あず」と待ち合わせた。 世田谷の小京都「映えスポット」は… さっそく目指したのは、「世田谷の小京都」と呼ばれている烏山寺町。区の史料によれば、関東大震災の後、浅草や築地、麻布、芝などから26の寺院が集まったという。 バスから窓の外を眺めていると、立派な門構えの寺が左右に並んでいた。「寺院通一番」で降り、「烏山寺町ぶらり散策マップ」を片手に歩いた。 宗派はバラバラだが、どれも特徴的なつくりの寺ばかり。閑静な住宅街の一角に、別世界が広がっていた。江戸時代に活躍した浮世絵師の喜多川歌麿や、落語家の三遊亭圓生(えんしょう)の墓がある寺などを見て回った後、高源院に着いた。 岩崎宗光住職(77)による… この記事は有料記事です。残り1244文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
立憲の梅谷守衆院議員、地元で日本酒配布「会合の対価」と違法性否定
有料記事 北沢祐生 井上充昌2024年2月20日 18時12分 立憲民主党の梅谷守衆院議員(50)=旧新潟6区、当選1回=が地元の新潟県上越市で日本酒を配っていたことがわかった。公職選挙法は政治家による選挙区内での寄付を禁じている。梅谷氏は報道各社の取材に配布を認める一方、「会合の対価という認識だった」と述べ、寄付には当たらないとの考えを示した。 地元関係者によると、梅谷氏は1月14日、町内会のどんど焼きの会場を訪れ、町内会長の男性に「これを神様に」と言って、のし付きの日本酒の一升瓶を袋に入った状態で手渡した。参加費は不要だったという。 1月下旬には町内会長らが集まる総会に顔を見せ、「皆さんで飲んで下さい」と日本酒の一升瓶を差し入れた。総会後の懇親会には出席せず、会費は別に支払われていたという。これらのほかにも、以前から日本酒を提供していたとの複数の証言がある。 20日、国会内で取材に応じた梅谷氏は 20日に国会内で取材に応じ… この記事は有料記事です。残り250文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
警視庁150年記念特別展が開催 震災で残った看板、著名人の色紙も
福冨旅史2024年2月20日 15時00分 警視庁が今年、創設から150年を迎え、記念する特別展が20日、警察博物館「ポリスミュージアム」(東京都中央区京橋3丁目)で始まった。関東大震災で焼失した旧庁舎で焼け残った看板や、1964年の東京五輪の警備本部の看板が初公開された。 明治~昭和期にかけての制服や、木製から銅製、紙製に移り変わった歴代の運転免許証などの実物資料約600点を展示。明治時代に警察官が使ったサーベルや階級章、十手なども並ぶ。 ドラマ「相棒」に出演する俳優の水谷豊さんや、人気漫画「名探偵コナン」の作者・青山剛昌さんら、警察ゆかりの小説やドラマなどで活躍する著名人のサイン色紙も飾られている。 この日開かれた開場式で、山口博・企画課長は「数々の事件・災害などに立ち向かい、人々の安全・安心を確保するという使命を果たすため、皆様とともに歩んできた警視庁の歴史に触れていただけたら」とあいさつした。3月3日まで。特別展含めて入館無料。(福冨旅史) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
父から受け継いだ漁船、隆起した輪島港で身動きとれず「もどかしい」
能登半島地震で海面が隆起し、石川県輪島市の輪島港では、船が出せず漁ができない状況が続いている。波止場の中央付近では、底引き網漁船「浜谷丸」が、地震発生当初から身動きがとれない状態が続いている。 18日、浜谷丸の浜谷達也船長(37)ら数人の漁師が小舟で浜谷丸に近づいていた。少しでも荷を軽くするため、1束数百キロあるという底引き網を船から下ろしたり、満潮時に船が流されないようロープで固定したりする作業に追われていた。 浜谷さんによると、1月1日の地震発生直後、浜谷丸を沖に逃がそうとしたが、船底から引っかかるような音がし、身動きがとれなくなり座礁。大きな波に流されて陸地に近づいたタイミングで浜谷さんらは脱出できたが、浜谷丸は波止場内で流され続けたという。 高校卒業後、漁師になった浜谷さんは、父とおじの3人で漁に出ていた。父は無口で厳しく、よく怒られたと振り返る。浜谷さんが20代半ばの頃、持病の悪化した父は、急きょ船を下りることになった。その後も網の修繕などを手伝ってくれていたが、「あと2、3年、じっくりと漁を教えたかった」と悔しそうに話していたという。2022年、透析治療などの末、父は亡くなった。 浜谷丸はそんな父が残してくれた船だ。今は小舟で定期的に近づき状況を確認しているが、船底が傷ついているかもしれないという。「見えているのに、近づけないもどかしさがある。できるなら、あの船でもう一度仕事がしたい。あきらめきれない」 ズワイガニ漁が解禁されている3月下旬までが、本来は底引き網漁のかき入れ時だった。漁に出られなくなった漁師のほとんどは金沢市などに避難しているという。(小林一茂) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 能登半島地震 1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
ラブホで男性を刺して死なせた女に懲役6年 背景に知的障害と暴力
東京・池袋のラブホテルで男性(当時82)をカッターナイフで刺して死なせたなどとして、傷害致死罪などに問われた無職藤井遥被告(26)に対する裁判員裁判の判決が20日、東京地裁であった。坂田威一郎裁判長は、懲役6年(求刑懲役9年)を言い渡した。 公判では、被告に知的障害などがあり、知人の男らが障害の特性につけ込んで売春をさせていた経緯が明らかになり、こうした事情を踏まえた量刑が争点になっていた。 起訴状などによると、藤井被告は2022年1月、路上で出会った男性と東京都豊島区のラブホテルに入った。客室内で財布から現金約3万円を盗んだことをとがめられ、持っていたカッターナイフで男性の胸と太ももを刺して、大腿(だいたい)動脈切断による出血性ショックで死なせたなどとされる。被告は起訴内容を認め、刑事責任能力も争わなかった。 公判では、被告が知人の男に「毎日2万円」を渡す約束をし、売春や客からの窃盗を連日繰り返していたことが明かされた。男からは暴力を振るわれ、男の交際相手が被告の売春相手を探すなどしていた。また被告は起訴前の精神鑑定で、軽度の知的障害や重い注意欠如・多動症(ADHD)などと診断された。 弁護側は事実関係は争わなかったが、事件に至る経緯や被告の障害などを踏まえるべきだと主張。「被告が利用されていた側面や、好ましくない環境に身を置いてしまう特性もある」などと述べて、懲役4年が相当だと訴えていた。(田中恭太) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
昨秋以降に虐待激化か、両手足に新旧のあざ 5歳児望愛ちゃん虐待死
渡部耕平 福岡龍一郎 野田佑介2024年2月20日 12時00分 青森県八戸市で1月、宮本望愛(のの)ちゃん(当時5)に自宅の浴槽内で水をかけて放置し、低体温症で死なせたとして、いずれも無職で母親の宮本菜々美(22)と内縁の夫の関川亮(31)の両容疑者が傷害致死の疑いで逮捕された事件で、望愛ちゃんへの虐待が昨秋ごろから激しくなったとみられることが、捜査関係者への取材でわかった。 捜査関係者によると、関川容疑者は昨年6月以降、八戸市内で宮本容疑者と、その子どもの望愛ちゃんと長男(1)と同居。10月に事件のあったマンションに引っ越した。司法解剖の結果、望愛ちゃんの両手足には殴られて出来たとみられる多くのあざがあり、古いものと新しいものとが混在していた。県警はあざの状況などから、関川容疑者による虐待が昨秋以降に激しくなったとみて調べている。 関川容疑者は、望愛ちゃんに水をかけたことについて「しつけのつもりでやった」という趣旨の説明をし、事件前にも何度か水をかけたことを認めているという。 一方、県の八戸児童相談所は昨年7月と9月にあった望愛ちゃんに関する虐待通告を受け、10月末に職員が望愛ちゃんや両容疑者に面談した。だが、服の上から健康状態を確認して「あざなどはなかった」とし、翌月に対応を打ち切っていた。 関川容疑者が生まれ育ったのは、八戸市沿岸部にある漁業が盛んな集落。関川容疑者は昨夏もウニ漁を手伝ったという。幼少期を知る70代の女性は「とにかくやんちゃで、父親から厳しくしつけられていた」と振り返った。 地元の小、中学校に進学。学校を卒業後は、いくつかの仕事を転々としていたとみられている。同じ小中学校に通っていた女性は、数年前に関川容疑者に再会し「結婚して実子がいたが、離婚した」と聞いた。その際、関川容疑者は「子どもはかわいいが、親権を妻側に取られてしまった」と残念そうにこぼしたという。(渡部耕平、福岡龍一郎、野田佑介) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「絶対詐欺」たたみかけた店員、気づかせるまで6分 県警が映像公開
有料記事 西岡矩毅 太田悠斗2024年2月20日 12時00分 【動画】「詐欺だと思います」被害を防いだコンビニ店員、説得の8分間=福岡県警提供 昨年12月の朝。福岡県久留米市のコンビニで、右手に1万円札の束、左手にプリペイドカードを持った50代の男性がレジ前に立った。 「すみません。30万円をこれに」「早くせないかんっちゃん」。男性は焦った様子だった。店員は詐欺を疑った。 「詐欺の可能性の方が高いと思います」「絶対詐欺」「ほぼ詐欺」。言葉を変え説得を続ける店員に、男性はそれでもプリペイドカードの購入を求め続けた。そんな様子が、県警久留米署が公開したコンビニ店内の映像から明らかになった。 県警が、詐欺を信じ込まされた人と店員のやりとりの映像を公表するのは初めて。「いくら説得されても、信じ込んでしまう詐欺の恐ろしさを自分ごととして感じてもらいたい」(県警生活安全総務課)という。 男性が、店員のたたみかけるような説得をうけ、自分が詐欺に遭っているかもしれないと思い直し始めるまで約6分。詐欺を信じ込まされた人がどうなるのか、どう説得すれば詐欺だと気づいてもらえるのか、がわかる映像だ。 30万円分のプリペイドカー… この記事は有料記事です。残り1676文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
新潟市の中学校、校舎解体へ 能登地震で12センチずれ、杭にひび
能登半島地震で被災した新潟市西区の坂井輪中学校について、市教育委員会は損傷が激しい校舎の一つを解体すると決めた。1年ほどかけて敷地内の別の場所にプレハブの仮設校舎を建てるとともに、新校舎の検討を進める。 市教委によると、地震後、3階建ての南校舎と、隣接する4階建ての北校舎ともに使用を全面的に中止。損傷程度を詳しく調べたところ、南校舎は全体が南側に12センチずれ、建物を支える杭にひび割れや傾きが生じており、使用するのは困難と判断した。北校舎は修繕で済む見込みという。 授業は1月11日に再開され、3年生と特別支援学級は近くの市立新通小学校で、1、2年生はオンラインで受けている。4月からは新1年生が新通小で、新2、3年生は北校舎で学習する予定という。(茂木克信) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 能登半島地震 1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
計画・マニュアルだらけの防災 危機管理アドバイザーも「うんざり」
能登半島地震が起きると、岸田文雄首相は「できることはすべてやる」と言いました。「だったら命の瀬戸際にいる人を守って!」と憤るのは、危機管理アドバイザーの国崎信江さん。有事のたびに新たな計画やマニュアルの作成を押しつける国の災害対応の検証のあり方を繰り返していては「被害は減らない」と訴えています。 ――東日本大震災の後、国土強靱(きょうじん)化が進められましたが、実効性はあったのでしょうか。 「本来、国土強靱化計画は堤防工事のようなハードの整備ばかりでなく、災害が起きた後のソフトな対応を視野に入れた施策です。能登半島地震ではこれが十分に機能せず、計画倒れだったことが最大の問題です」 ――計画倒れですか。 「地域防災計画、国土強靱化計画、消防計画、地区防災計画、非常災害対策計画、要配慮者利用施設における避難確保計画、社会福祉施設等における事業継続計画(BCP)、社会福祉施設等における地震防災対策マニュアル、津波災害警戒区域内の要配慮者利用施設の津波を想定した災害対策マニュアル、個別避難計画、自主防災会防災計画、避難所運営マニュアル等、いったいいくつの計画やマニュアルが存在しているのでしょうか」 「大規模な災害が起きると次々に新しい計画づくりやマニュアルの改定などが各省庁の検討会を経て発生します。そのたびに自治体職員、地域、施設職員は疲弊する。政府の検討会議で『各機関との連携や実効性のある計画書・マニュアルづくりが必要だ』という提言が繰り返されてきましたが、正直うんざりです」 ――ありそうな話ですね。 「過去の災害で計画書やマニ… この記事は有料記事です。残り4861文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません 能登半島地震 1月1日午後4時10分ごろ、石川県能登地方を震源とする強い地震があり、石川県志賀町で震度7を観測しました。被害状況を伝える最新ニュースや、地震への備えなどの情報をお届けします。[もっと見る] Source : 社会 – 朝日新聞デジタル