森下裕介2024年1月26日 19時05分 旧優生保護法の下で不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして、聴覚障害がある大阪府の70代の夫妻が国に計2200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が26日、大阪高裁であった。阪本勝裁判長は、一審・大阪地裁と同様に旧法を違憲とする一方、地裁が請求を棄却した判決を変更。不法行為から20年を過ぎると賠償請求権が消える「除斥期間」の適用を制限し、国に1320万円の賠償を命じた。 判決によると、原告は、生後間もないころの高熱が原因で耳が聞こえなくなった妻と、生まれつき聴覚障害がある夫。妻は1974年、医師の説明なしに手術を受け、新たな子どもを産み育てられなくなった。 阪本裁判長は、妻は手術時の記録が残っておらず、その後も多くの病院で診断書の作成を断られ続けた経緯があったことを重視。2019年8月に診断書を入手してから6カ月以内は除斥期間の適用は制限されるとし、同年12月に提訴した夫妻には賠償請求権があると判断した。その上で、旧法を「非人道的で人権侵害の程度は非常に大きい」と断じ、国は、夫妻が子を産み育てる自由を侵害したと指摘した。 判決を受け、原告側代理人の辻川圭乃(たまの)弁護士は「とても丁寧に吟味し、司法府の矜持(きょうじ)を示した」と評価した。こども家庭庁は「現時点でコメントは差し控える」としている。 同種訴訟は全国12地裁・支部であり、最高裁は、先行する5訴訟を大法廷で審理する決定をしている。弁護団によると、高裁判決は8件目で、うち6件は除斥期間の適用を制限するなどして原告側の請求を認めた。(森下裕介) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
裏金事件、企業なら「一発アウト」 緊張感欠く政治と私たちの責任
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件に批判が集まり、政治不信が強まっていると言われます。しかし、私たち有権者の側には、裏金を平気で作るような政治風土を許してきた責任はないのでしょうか。憲法学者の江藤祥平・一橋大学教授は、この問題は日本の「公共社会の貧相さと深く関係している」といいます。どういうことなのか、話を聞きました。 ◇ 自民党派閥の政治資金パーティー券をめぐる裏金事件で不思議に思うのは、形式犯だといって事件を軽く見る向きがあることです。ロッキード事件の時のような贈収賄の絡んだ疑獄事件ではない、と。そうでしょうか。 一般の企業であればこんな裏金作りが発覚すれば「一発アウト」でしょう。投資家を欺いたとして経営陣が責任を問われ、社会的な信用を失って企業の存続さえ危ぶまれる危機に陥りかねません。 政治を変えようとしない有権者 政治家の裏金問題は、有権者… この記事は有料記事です。残り939文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「ふくし」はすぐ目の前に 憲法13条は「日常の支え合い」から
「手に取っていただいて、ありがとう」 毎号、こんな言葉から始まる雑誌があります。創刊から13年目の季刊誌「コトノネ」。 ニュースレター「アナザーノート」 アナザーノー トは、紙⾯やデジタルでは公開していないオリジナル記事をメールで先⾏配信する新たなスタイルのニュースレターです。今回は1⽉21⽇号をWEB版でお届けします。レター未登録の⽅は⽂末のリンクから無料登録できます。 徳島県の山あいにある「未来コンビニ」を昨秋に訪れたら、置いてありました。「コンビニの福祉」という記事で、この店が紹介されていました。 障害者が働く店でも、行政などの福祉サービスの提供拠点でもないのに、福祉とどんな関係があるのだろう? 店は、通り沿いが全面ガラス… この記事は有料記事です。残り2981文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
桐島聡容疑者とみられる男を事情聴取 70年代の連続企業爆破事件
2024年1月26日 16時13分 1970年代に起きた連続企業爆破事件で、警視庁が、爆発物取締罰則違反容疑で指定重要指名手配している桐島聡容疑者(70)とみられる男を把握し、事情を聴いていることがわかった。捜査関係者への取材でわかった。 警視庁によると、桐島容疑者は1975年4月、東京・銀座のビルに手製爆弾を仕掛けて爆発させ、一部を壊した疑いが持たれている。 警視庁は、桐島容疑者の行方を追っていた。本人と特定されれば、49年ぶりに確保されたことになる。 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
米紙に「行くべき」選ばれた山口市 観光循環タクシーなど導入へ
山野拓郎2024年1月26日 12時13分 米紙ニューヨーク・タイムズが発表した「2024年に行くべき52カ所」に山口市が選ばれたことを受け、伊藤和貴市長は25日、観光客の増加を見込んで循環タクシーの導入などの取り組みを始めると発表した。「反響の大きさを実感している。とりあえず、すぐにでも対応すべきものは現在の予算の中で対応し、新年度予算案でも新たな事業を検討している」と述べた。 観光循環タクシーは乗り合いのジャンボタクシーを使う。玄関口のJR山口駅を発着し、県立美術館などの「文化施設ゾーン」や五重塔のある瑠璃光寺など「大内文化ゾーン」を回遊するコースを想定している。3月をめどに運行を始める。 五重塔で行っている夜のプロジェクションマッピングは今月28日で終了する予定だったが、3月31日まで延長する。午後6時から8時までのところを29日から午後9時までにする。 また、外国人客の増加を見込んで、観光案内所の職員やガイド用に同時通訳機を備える。香山公園、JR湯田温泉駅の足湯、案内所でWiFiの箇所数を増やして通信の環境を整備する。キャッシュレス決済を広げるため、設備を導入する店側への支援も検討する。 伊藤市長は「歴史や文化などあるがままの山口市の姿を存分に感じてもらえるよう取り組みを進めていきたい」と話した。(山野拓郎) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
届ける、おむつも安心も 「見守り定期便」で孤立や虐待防止へ
大阪府富田林市は1月から、0歳児がいる世帯におむつなどを届け、その際に保護者に悩みや困りごとを聞く「見守りおむつ定期便」を始めた。きっかけは、市内で起きた2歳児の熱中症死亡事件。「見守り配達員」が訪問時に悩みや困りごとも聞くことで、不安解消や孤立防止、虐待防止などにつなげるのが狙いだ。 定期便は9日から始まった。市内に住む高宮紗世さん(32)は早速おむつを受け取った。生後9カ月になる長女・佳純さんの子育て真っ最中で、高宮さんは「定期的に届けてもらい、相談も聞いてもらえるのは助かる。初めての子育てで、先輩の方の経験も聞け、参考になる」。 谷口香織さん(37)は、三女・瑠夏ちゃんがおむつ定期便の対象だ。生まれて6カ月。ほかに7歳、4歳の子がいる。谷口さんは「家にいると大人としゃべることが少なく、雑談ができるだけでもありがたい」と話した。 対象となる0歳児は、誕生日の翌々月から1歳の誕生月まで。毎月1500円相当のおむつなどを、市から委託を受けた大阪いずみ市民生協の「見守り配達員」の職員が対面で届ける。1月は343世帯に配達する予定。 配達員は4人。子育て経験があり、市の子育て施策や、保護者にどのように接するかなどの研修を受けている。担当する地区が決まっていて、「育児の悩みや困りごとを気軽に話せる関係」をめざす。訪問時に気付いたことなどはタブレットで記録。月に1度は市の担当者と集まって情報交換し、必要と判断した場合は支援につなげる。 おむつ定期便は、兵庫県明石市が2020年から実施している。市によると、生後3カ月から満1歳の誕生月まで、毎月約2200世帯に約3千円分のおむつなどを対面で渡している。対象のほぼすべての世帯に利用してもらっているという。福岡市も昨年8月から、0歳から3歳の誕生月までの子どもがいる世帯を対象に、「おむつと安心定期便」を始めた。 富田林市では、年間で約600人の子どもが生まれる。市は、出生届けの提出などの際に定期便について知らせるほか、対象となる世帯に案内を送る。吉村善美市長は「乳児を育てる家庭の不安や心配に寄り添い、支援したい」と話している。(前田智) ◇ 〈富田林市の2歳児熱中症死事件〉2022年6月、富田林市内の団地で、当時2歳の女児が熱中症で亡くなり、祖母と、内縁関係だった男が逮捕された。事件では、女児の手足を粘着テープで縛り、ベビーサークル内に放置していたことや、この間にユニバーサル・スタジオ・ジャパンを訪れていたことなどがわかった。2人は保護責任者遺棄致死と逮捕監禁の罪で起訴され、男は昨年12月に一審で懲役6年の判決を受け控訴。祖母の公判は1月30日から始まる。 Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
地震で唯一の国道が断たれたら、どう避難? 原発のある半島で聞いた
最大震度7を観測する地震が発生した能登半島では道路が寸断されて集落が孤立した。 愛媛県伊方町も佐田岬半島に位置し、同様の地形的リスクを抱える。大地震や原発事故が起きたら、住民は避難できるのか。 佐田岬半島は九州に向かって、東西に約40キロ突き出している。背骨のように貫く唯一の国道、197号を岬に向かって車で走った。左手に宇和海、右手に瀬戸内海の水面がきらめく。 空は快晴。カーブを曲がるたび、遠くに九州が望める。視界が開けているのは尾根近くの急斜面を通っていることの裏返しだ。 四国電力伊方原発の表示が見えた。原発は半島の付け根近くにあり、瀬戸内海に面している。1号機(出力56・6万キロワット)と2号機(同56・6万キロワット)では廃炉作業が進み、3号機(89万キロワット)は現在も運転している。 点在する集落の表示がいくつもあるが、いずれも曲がりくねった狭い道を下りなければたどり着けない。 佐田岬漁港に着くと、廃校となった串中学校の運動場跡に「H」の大きな白い文字が見えた。緊急時のヘリポートだ。目の前には宇和海。南海トラフ地震では大きな津波が想定される。 「お客さんをどう誘導するか、毎晩考える」 民宿を夫と営む大岩キヨ子さ… この記事は有料記事です。残り1025文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
学士会館、再開発で大型ビル計画 年内営業終了、旧館は保存へ 東京
森下香枝2024年1月26日 8時30分 国の有形文化財に登録されている学士会館(東京都千代田区)が、再開発にあわせ年内いっぱいで営業を終了する。 同会館は1928年開業。関東大震災後に建てられた「震災復興建築」で、旧館は日本橋高島屋や帝国ホテル新本館を手がけた高橋貞太郎によって設計された。旧七帝大の卒業生の交流の場としてつくられたが、現在ではレストラン、結婚式場などとして一般利用されている。 学士会や事業者によると、築90年を過ぎて、耐震性を含め老朽化が進んでいるため、全面改修することに。白山通りの拡張計画もあり、学士会単独での事業が難しいため、隣地所有者と共同で再開発に乗り出すことになった。 2025年4月ごろから新館の解体工事を始める予定だが、旧館はそのままの姿で移動させる曳家(ひきや)工事で保存する計画だ。また、会館に隣接する神田錦町3丁目ビルが解体され、共同事業の大型ビルが29年夏ごろに完成予定という。 23日にあった事業説明会では、「再開発でどれぐらいの高さのビルが建つのか」といった質問が相次いだ。事業者側は「まだ決まっていない」と明らかにしなかった。(森下香枝) 有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
車の整備士からスタバ焙煎士、今はビール造り 独立したくて歩んだ道
整備士、焙煎(ばいせん)士、そして醸造家。全て1人の男性が経験してきた職業だ。 渡辺仁史さん(36)は昨夏、自ら醸造したクラフトビールを提供する店「OHLOY STORE(オーロイストア)」(高松市内町)をオープンさせた。 香川県坂出市出身。地元の高校を卒業後、車の整備士になるために専門学校に通い、就職した。いずれは車関係の仕事で独立することが目標だった。 しかし、「どんな車でも直せる」と自信がついた25歳のころ、この業界は自分に合わないと感じるようになった。 そんな時、スターバックスコーヒーに関するビジネス書を読んだ。「面白いことをやっている」と思った。たまたま社員募集をしていたので応募し、2012年に入社した。 社内公募は狭き門、整備士の経験が生きた 香川県内の店舗で働いて5年ほど経ったころ、焙煎所を併設した高級店「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」で働く焙煎士の社内公募があった。 世界展開するスタバで日本初の体験型店舗。選ばれれば米国での10カ月の研修を受け、中目黒の新店舗で働ける。「コーヒーで独立したい、一度は香川から出なければ」と考えていた渡辺さんにとって絶好のチャンス。迷わず手を挙げた。 全国で5人の狭き門だったが… この記事は有料記事です。残り787文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
スピード開票の東京・府中市、新システム導入の真意 28日市長選
28日に市長選が投開票される東京都府中市は、そのスピード開票で全国的に知られる。速さと正確さにこだわり、さまざまな工夫をこらしてきた。今回はあらたなシステムも導入し、より効率的な開票作業を目指す。 有権者21万人の前回選、わずか45分で確定 候補者が2人だった前回4年前の市長選。有権者数約21万人、投票者数6万7556人のなか、開票開始から確定までは、わずか45分だった。2016年の市長選は37分、12年は39分。同じ規模の他の自治体と比べても、そのスピードは圧倒的で、各地から視察が絶えない。 市選挙管理委員会の努力の歴史は長い。1967年には競艇場で使っていた紙幣の計数機を導入し、投票日の即日開票を可能にした。87年には折って入れても投票箱の中で自然に開く投票用紙を開発。後に全国に広まった。 選管が明かした「速さの秘訣」 「速さの秘訣(ひけつ)は事… この記事は有料記事です。残り573文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 ※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません Source : 社会 – 朝日新聞デジタル