キッチンから湯気が上がる。 11月9日午前7時半すぎ。松山市の有料老人ホームの食堂に、次々とお年寄りたちが集まってきた。「は~い。お待たせしました」。スタッフの女性(55)がパンかごはんかそれぞれの好みに合わせて、朝食をテーブルに運ぶ。 介助が必要な人にはスプーンで口に運ぶ。食後は薬を飲ませ、車いすを押して部屋まで送り届けた。 女性はスリや置き引きの常習犯だった。27歳のときから7回、計18年7カ月の刑務所暮らしをした。 刑務所や少年院からの出所者・出院者も住むところがなければ、再犯する確率は高くなります。被害を生み出す再犯を防ぐため、行き場のない人たちを支えようと奮闘する各地の自立準備ホームを訪ねました。その最終回です。 早くに両親を亡くし、中卒で… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
牛の生レバー、常連客に「無料サービス」か 兵庫県の飲食店で食中毒
兵庫県は24日、豊岡市出石町福住の飲食店「唐仙坊(とうせんぼう)」で、提供が禁止されている牛の生レバーなどを食べた4人が発熱などの症状を訴えたと発表した。このうち3人の検便から食中毒菌のカンピロバクターが検出されたことから、県は食中毒と断定し、同店に対して同日から営業禁止を命じた。 県生活衛生課によると、12日に同店を訪れた12人のグループが、牛のレバ刺し(生レバー)や魚介類の刺し身などを食べた。このうち、26~34歳の男女4人が発熱や下痢などの症状を訴え、病院で受診した。現在は快方に向かっているという。 牛の生レバーは2012年に提供が禁止されたが、この店のメニュー表には「牛のレバ刺し」はなく、常連客に無料サービスとして、その後も提供を続けていた、と同課はみている。(高橋孝二) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
「百沢温泉をハッピィな場所に」 休業の施設、芸人が買い取り再生へ
お笑い芸人のあべこうじさん(48)が、施設の老朽化で休止していた青森県弘前市の百沢(ひゃくざわ)温泉を買い取り、再開に向けて準備を進めている。あべさんは自らがMCを務める県内のテレビ番組名にちなみ、「百沢温泉をみんなが集まる『ハッピィ』な場所に再生したい」と意気込みを語る。 百沢温泉は岩木山のふもと、岩木山神社にほど近い場所にある。鉄分が豊富な白濁した湯が人気で地域の人に親しまれてきたが、1983年に建てられた施設が老朽化し、今年9月から休業していた。 休業から間もないころ、あべさんは「施設が売りに出される」という話を耳にした。建物の傷みがひどいため休業しているものの、温泉は湧き続けているという。すぐに見に行って気に入り、自費での購入を決めた。 というのも、あべさんはここ数年、県内で温泉施設の購入を検討していて、あちこちの温泉地を見て回っていたのだ。 あべさんがMCを務める青森朝日放送(ABA)の土曜朝の情報番組「ハッピィ」は、放送開始から10年を突破。「10年の感謝を何かの形で青森の皆さんに還元できないか」と思っていた。 県内の温泉巡りが好きなあべさん。ただ最近は休業や、客足が途絶えている温泉施設も目についていて、自分も何か力になれないかと考えていたという。そんな時に巡り合ったのが、百沢温泉だった。あべさんは「貴重な温泉をこのまま廃れさせるのではなく、たくさんの人が集う楽しい場所に生まれ変わらせたい」と購入した理由を話す。 管理人には県内在住の芸人OGAさん(44)が就き、住み込みで施設の管理を行う。温泉は来年春の再開を目指し、建物の修復などが進む。将来的には宿泊施設やオートキャンプ場などの整備も考えているという。OGAさんは調理師の資格も持っていて、お手製のメニューを出す食事処(どころ)の開業など夢も広がる。 とはいえ、人手不足は否めない。インテリアの手直しや日々の浴場清掃など、仕事は山積みだ。OGAさんは「自分だけでは心細いです」と本音もちらり。 あべさんは「例えばお風呂掃除をしてくれたら入浴券をプレゼントするとか。得意な分野を生かして力を貸してくれる仲間をどんどん増やし、一緒に楽しく作り上げていきたい。百沢温泉再生物語の開幕です」と話し、協力を募っている。 挑戦の様子は「ハッピィ」の番組内で随時、紹介していく予定だ。(伊藤唯行) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
お麩の魅力いかせばプロテインバーに 老舗の4代目候補が探る可能性
大正時代からお麩(ふ)を製造してきた岐阜県垂井町表佐の「麩美商店」がお麩を使ったプロテインバーの販売を始めた。開発したのは4代目候補の高木孝生さん(29)。乳製品や卵を使わず、100%植物由来の原料にこだわった。 麩美商店は1919(大正8)年創業。孝生さんは大学卒業後、名古屋の会社で営業の仕事をしていたが、昨春、家業を継ぐため垂井町に戻ってきた。 お麩は小麦のグルテン(たんぱく質)が原料。僧侶が肉に代わるたんぱく源として食べていた。「小麦なのに、高たんぱくなのは自分も知らず、意外だった。この魅力をいかしたい」とプロテインバーの開発に乗り出した。 世界的に不足が懸念されるたんぱく質 同じく植物性たんぱく質の豊… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
キラキラ光る「砂」使うだけでSDGs?時代を先取り、ようやく脚光
「使うだけでSDGs 環境に優しい魔法の砂」。公園の一角でこんな看板を見つけた。その周囲には、キラキラと光る砂が敷き詰められている。製造元を訪ねたら、20年近く前から手がけているリサイクル品だった。時代がようやく追いつき、引き合いが増えてきたという。 角を取り除き、5ミリ以下に砕く…「砂」の原料は? 看板が立っているのは、愛知県半田市緑ケ丘にある有脇ふれあい公園の一角。ベンチ2基の周囲にガラスの砂が敷き詰められており、雑草は生えていなかった。 市都市計画課によると、雑草に困っていた、管理する住民たちから相談を受けて今年1月、試験導入した。担当者は「聞いていた通りの効果は確認できた」と話す。 製造元の愛知県東浦町の廃棄… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
渋谷から30キロ離れた都内に「代官山」誕生へ 「高級感」推す声も
JR昭島駅前に「代官山」という新たな地名が誕生しそうだ。東京都昭島市が公募で絞り込んだもので、議会の議決を経て2024年8月から新しい住所になる見込み。事前に開かれた審議会では、都内屈指のおしゃれエリアで知られる渋谷区の代官山を意識した発言も多く出たという。 昭島駅北側に広がる100万平方メートルの一帯は、○丁目○番といった住居表示がなく、住所に地番を用いている。大型商業施設やホテルがあるほか、大型マンションが建設中で開発が進んでいる。住む人が大幅に増える見込みもあり、市は新しい町名を募集。集まった129種類の案を、地域内の住民や有識者、警察署や郵便局の幹部らでつくる審議会で議論した。 なぜ代官山なのか。 市によると、室町時代に武家… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
戻ってきた血染めの靴 遺族の涙に見合う記事を書けたか、記者の自問
取材中に涙が出そうになったのは初めてだった。 6月8日、神戸市北区で高校2年の堤将太さん(当時16)が殺害された事件の第2回公判。父・敏さん(65)が被告の男(30)に直接質問した時のことだ。 「なぜ将太はあなたに殺されなければならなかったんですか」 「将太がどれだけ痛かったか、つらかったか、苦しかったかわかりますか」 被告を見据える敏さんの大きな声が、張り詰めた法廷に響いた。 息子を失ったのは2010年。敏さんのこれまでの血のにじむような日々と、裁判にかける並々ならぬ思いを取材してきた身として、その気迫に胸を打たれた。 容疑者逮捕までの11年間、敏さんは情報提供を求めるビラを6万枚配り、刑法や刑事訴訟法を勉強するため大学に通った。凶悪事件の裁判の傍聴も重ねた。 裁判前は、夜な夜な被告への質問を考えた。 「人を殺すことは取り返しのつかないこと」「私たちは将太の死に意味を与える義務がある。無駄にはしない」 裁判への思いがびっしり刻まれたA5ノートは、強い筆圧でどのページもぼこぼこだった。 被告には懲役18年の判決が下された。だが遺族にとって、事件は今も終わっていない。 「見られへんよね」 判決後の7月、検察で保管されていた将太さんの遺品が返ってきた。 事件当時、身につけていた衣… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
外国籍のタクシー・バス運転手、増えるのか 先手打つ業界の事情とは
タクシーやバスなどの運転に必要な2種免許で外国語受験に門戸が開かれることは、働き手不足の運輸・運送業界にとって朗報だ。一方、ライドシェアとの競合も課題であるハイヤー・タクシー業界では、すでに外国人の人材確保に向けた「先手」ともいえる取り組みも始まっている。 国土交通省によると、タクシーの運転手数は2021年度は25万334人で、10年前の38万5021人から65%ほどにまで落ち込んだ。コロナ禍で高齢運転手が相次いで離職したことも減少に拍車をかけた。 「とにかく働いてくれるひとがいればウェルカム」(全国ハイヤー・タクシー連合会担当者)という状況にあって、外国人の運転手の存在は魅力的だが、日本語でしか受験できない2種免許は「壁」になっていた。 11月には、大型2種免許の筆記試験でカンニングをしたとして、インドネシア国籍の会社員の男(31)が千葉県警に偽計業務妨害の疑いで逮捕された。千葉地検は11月22日、偽計業務妨害の罪で起訴した。 男は、2種免許の学科試験で、問題をスマホで撮影して画像を友人に送付。捜査関係者によると、男は日本に本社があるツアー会社のジャカルタ支店に勤務し「訪日中国人を対象にした観光バスの運転をしたかった」と説明。日本語の会話は堪能でツアーガイドの資格を取得していたが、学科試験の漢字が理解できずにカンニングしたなどと供述し、「どうしても受かりたかった」と話したという。 外国語受験の解禁に先駆けて外国人運転手の雇用・育成を進めるタクシー会社もある。 約2100人の運転手が所属する「日の丸交通」(東京)。23年12月現在で26カ国・地域の外国人ドライバーが在籍する。中国人約40人、韓国人約10人のほか、欧米やロシア、中東、アフリカ、東南アジア出身者などもいる。正規雇用を求めてやってきた人や、歩合給料制に引かれて転職した人が多いという。 ネックは漢字、地名が苦手 10年滞在でも 外国人雇用に力を入れ始めた… この記事は有料記事です。残り2267文字有料会員になると続きをお読みいただけます。 【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
松野前官房長官を任意聴取 高木、世耕、塩谷氏も 安倍派・裏金事件
自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)が政治資金パーティー収入の一部を裏金化したとされる事件で、東京地検特捜部は24日までに、同派中枢幹部の松野博一・前官房長官、高木毅・前党国会対策委員長、世耕弘成・前党参院幹事長、塩谷立・元文部科学相から任意で事情聴取した。関係者への取材でわかった。組織性が疑われる裏金作りへの関与などを確認したとみられる。 松野氏らは一連の問題を受けて辞任したが、捜査は派閥事務所の家宅捜索に続き、最近まで政権中枢や党幹部だった議員本人に及んだ。特捜部は、他の同派幹部の萩生田光一・前党政調会長にも任意聴取を要請している。 裏金還流、22年の「廃止→撤回」経緯を確認 関係者によると、安倍派では… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
北極に消えた犬ぞり探検家・山崎哲秀さん 極地観測に尽力、志半ばで
犬ぞり北極探検家の山崎哲秀さん(56)が11月末、グリーンランドで消息を絶った。探検家として活動する傍ら、20年以上にわたって日本の極地観測を支え、研究者らは「かけがえのない存在」と心を痛める。「北極圏に日本の観測拠点をつくりたい」。その志を継ごうと、家族や友人らが協力を呼びかけている。 頼りにされた「犬ぞり案内人」 北緯78度。山崎さんは毎冬、「地球最北の村」と呼ばれるグリーンランド北西のシオラパルクで暮らした。約4カ月間は太陽が昇らない極夜。零下30度前後、強烈な風が肌を突き刺す。 そんななか犬ぞりで各地をまわり、海氷や気象の試料やデータを集めて研究者に提供した。日本から研究者が訪れる夏は、危険が潜む氷河や海氷の上で安全に観測できるよう手助けし、いつしか「犬ぞり案内人」と称されるようになった。 「犬ぞり案内人」山崎哲秀さんがグリーンランドで消息を絶った。極地の観測を支え続け、北極観測の拠点を作るという志半ば、惜しむ声が続く=中山由美撮影 この冬も、11月半ばに日本を発って村へ。自動気象計をメンテナンスし、海氷調査の準備を始めた。28日はブログに「まだ暖かいけど、そろそろ海氷が定着してくれますように」と記した。 途切れた足跡、セイウチの呼吸穴 29日午前、「海氷の下り口… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル