安全でないおもちゃのネット上での流通に対応するため、経済産業省の審議会は今月、安全基準を満たさないおもちゃを販売できないようにする制度の案をまとめた。 制度案では、対象となるおもちゃの製造事業者には国への届け出を求める。事業者には対象となるおもちゃを販売する際は安全基準を満たすことを義務づける。海外でつくられたおもちゃも、基準を満たしていないものは国が取り締まれるようにし、日本国内で流通しないようにする。案は、来年1月中旬までパブリックコメントにかけられており、経産省は今後、具体的な制度設計に入る。 背景として、安全基準を満たさず、海外では販売停止などになったおもちゃが日本のネット市場で出回ることができる状況がある。 経産省は今年、磁気の強い小… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
母は知りたい、いのち奪った男の真意を 届くのは無機質な紙1枚だけ
A4用紙1枚。「通知書」と書かれたその紙に、もう期待はしていない。 13年前に長男の圭祐さん(当時19)の命を奪われた母・釜谷美佳さん(57)の元には年2回、服役している加害者(35)の刑務所での処遇が記された通知が検察から届く。 「改善指導名 一般改善指導」「反則行為名 怠役 閉居5日 物品不正所持 閉居10日」 書かれているのは独特の無機質な用語の羅列。裏面に言葉の説明はある。でも「相手が事件をどう受け止め、いま何を考えているのか、これを読んでも全く分からないんです」。 例えば、反則が多いのはただルールを守れないだけなのか、それとも自暴自棄になっているのか。もしかして事件を反省しておらず、更生する気がないのか。そもそも反則が複数あるのは一般的なのか……。 一方的に送られてくるだけの通知書は、遺族の知りたいことには何も応えてくれない。 遺体から流れた、血混じりの「涙」 圭祐さんは2010年10月29日、神戸市須磨区の路上で2人の男から顔や頭を殴る、蹴るの暴行を受けて死亡した。圭祐さんが複数の友人と共に主犯の男の妹と遊んでいたのを、男は妹が連れ回されたと思い込んで暴行に及んだ。 遺体となって家に帰ってきた… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
当の教授「警察の作文」指摘 起訴取り消し事件国賠訴訟、27日判決
軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとして「大川原化工機」(横浜市)の社長らが逮捕、起訴され、その後に起訴が取り消された事件で、同社の社長らが捜査の違法性を主張し、国と東京都に賠償を求めた訴訟の判決が27日、東京地裁で言い渡される。裁判は、捜査を担当した警視庁の現役警察官が事件を「捏造(ねつぞう)」と証言するなど、異例の展開を見せた。 警視庁公安部や東京地検が適切な捜査や検討をしていれば、逮捕や起訴に至っていないかどうかが争点だ。具体的には、輸出規制を定めた国の省令の解釈と、警視庁公安部が実施した実験が十分だったかどうかが焦点となっている。 同社が輸出した噴霧乾燥機の輸出を規制する要件は、経済産業省の省令に定められている。要件の一つ「定置した状態で内部の滅菌または殺菌ができるもの」の定義について、経産省も明確な解釈を持っておらず、公安部は複数の有識者から聴取。独自に解釈を打ち立てたとして、原告側はこの解釈は誤りと訴える。 解釈の根拠の一つとなった公安部作成の「捜査メモ」に疑義が出ている。メモに発言が記されている四ノ宮成祥・防衛医科大学校長は、陳述書で「私の考えと異なる点、私の意図から外れて曲解されている点、私が話していない点が散見される」と指摘。朝日新聞の取材に「警察の作文だ」と述べた。 「目標に達さない実験結果、記載せず」捜査員が証言 争点の二つ目は公安部が実施した実験だ。 公安部は実験の結果、噴霧乾燥機の内部では一定以上の温度が保たれ、大腸菌などを死滅させられるとして、規制要件に触れると判断。原告側は、公安部が規制に抵触することを証明するには不十分と知っていたにもかかわらず、追加実験を行うなどの適切な捜査を怠ったと主張する。 捜査の過程で、同社関係者から「測定口」と呼ばれる温度が上がりにくい部分があるという指摘が複数出ていたが、公安部はこうした意見を受け入れなかったとされる。 裁判では、証人出廷した当時の捜査員が、機械内部の温度の測定実験をした際、実際は3カ所測定したのに、目標に達しなかった1カ所を捜査報告書に記載しなかったという旨の証言をした。 別の捜査員は、記載しなかった1カ所は実験に協力した企業が自主的に測ったものとして、捜査の違法性を否定したが、後にその企業の社長が「温度測定を申し出た事実はない」とする報告書を裁判に提出した。 一方、国や都は、原告側が指摘する規制要件の解釈や実験について、訴訟で「不合理ではない」などと主張している。 起訴後、同社側は実験を72回実施し、機器内部に温度が上がらない場所があることを証明。検察は「殺菌能力を立証するめどが立たない」として起訴を取り消した。(比嘉展玖) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
冬はずっとこたつで…その夢、ゲレンデでかないます 神戸・六甲山
六甲山頂近くの人工スキー場「六甲山スノーパーク」(神戸市灘区)で23日から、こたつの形をしたソリでゲレンデを滑走する「ソリごたつ」が登場した。 同パークの60周年イベントの一環。「寒い冬はずっとこたつに入っていたいけど、雪あそびもしたい」という夢をかなえようと企画。天板には、かごに積まれたミカンの置物などが設置され、「こたつ」気分を演出している。 「ソリごたつ」は雪ゾリ、雪あそび専用の「スノーランド」で行われ、訪れた人たちは、「こたつ」に足を突っ込んで雪原を滑り降り、歓声が上がっていた。 「ソリごたつ」は3月3日までの土日祝日と年末年始など同パークが祝日扱いにする日に登場する。問い合わせは、078・891・0366。(小宮路勝) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
安倍派の堀井学衆院議員の苫小牧事務所、年内で閉鎖 裏金問題影響か
自民党安倍派の政治資金パーティーをめぐる問題で、派閥から還流された1千万円超を裏金として受け取っていたと認めた堀井学衆院議員(当選4回、比例北海道ブロック)の苫小牧市にある事務所が今月末で閉鎖されることが23日、関係者への取材でわかった。地元の衆院北海道9区の事務所は、登別市の1カ所になる。 後援会や事務所など複数の関係者によると、堀井氏は地元事務所を通じて、20日前後に選挙区内の首長や党員、党所属の議員らに「事務所統合のお知らせ」と題する文書を送付。「今月31日付で苫小牧事務所を一時的に閉鎖し、登別事務所と統合」するとした。派閥のパーティー自粛で、今後運営資金が不足することが背景にあるという。 苫小牧事務所は2012年の堀井氏の初当選後に設置された。今年2月には、事務職員の退職を機に室蘭市にあった事務所も閉鎖している。堀井氏は室蘭市出身だが、07年~12年に登別市区選出の道議を務め、当時から同市に自宅があるなど本拠地としている。 堀井氏は元スピードスケート選手で、1994年のリレハンメル冬季五輪・男子500メートルの銅メダリスト。今年9月に内閣府副大臣に就任したが、パーティー問題を受けて今月14日に辞任した。(松本英仁) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
腐った政治に三下り半 不信を乗り越えていくために 辻愛沙子さん
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑は、国民の政治不信を強める結果となりました。社団法人「GO VOTE JAPAN」代表でクリエーティブディレクターの辻愛沙子さん(28)に話を聞きました。 ――現在の政治をどのようにみていますか。 裏金を受け取っていた疑惑がある松野博一官房長官の不信任決議案を立憲民主党が提出しましたが、否決されました。 民主主義は多数決が原理なので、仕方ないと思いつつ、野党が一致団結してもあっさりと否決されてしまうむなしさがありました。 ――岸田文雄首相はこの件に関して、「否決を受けて、松野氏に職務にあたってもらいたい」と述べました。松野氏はその後、辞表を出しています。 問題はそこです。先ほど話したように、国会で与党は不信任案に反対し否決となりました。「松野さんは長官にふさわしい人物だ」という決定を神聖なる国会の場で下したわけです。 ところが、その2日後には事実上の更迭となりました。国会での決定はなんだったのか、茶番とも言えるありように岸田政権の矛盾を感じざるを得ません。 そもそも、松野氏は「政府の立場としてお答えは差し控える」と定例会見でも、衆参両院の集中審議でも繰り返しましたが、自分の都合のいいことだけ話しますと言える立場ではない。 差し控えていいかどうか決める権利は国民にあると思います。自分の嫌疑を、自分たちで調査し、自分の都合のいいタイミングで答える……そんな小学生のようなへりくつが常態化していること自体おかしいのです。 説明責任を放棄 「国民をなめている」 ――そのようなズレが国民の政治離れを引き起こしているのでしょうか。 言葉を「はぐらかす」のが今… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
事件で失った娘の遺志を継ぎ 温泉街で料理店を開いたベトナム人夫婦
福島県二本松市の安達太良山ふもとに広がる岳温泉。地元の人や登山客らに愛される老舗の温泉街に今年、ベトナム料理店が開店した。店の名前は「ハオ・グエン・ショップ」。 店を営むのはレェ・アイン・ハオさん(41)とグエン・ティ・グエンさん(37)夫婦。理不尽な事件に巻き込まれて亡くなった、まな娘の遺志に応えようと、縁もゆかりもなかった福島にやってきた。 「いらっしゃいませ」。訪れた客に夫婦で、はじける笑顔とともに日本語で話しかける。 旅館だった建物を改装し、約60席を構える。店内には、葉でできた円錐(えんすい)形のカラフルなベトナムの笠「ノンラー」が飾られ、メニューには母国の定番、麺料理「フォー」やサンドイッチ「バインミー」、ベトナムコーヒーなどが並ぶ。 2人の娘は、レェ・ティ・ニャット・リンさん。6年前の3月、千葉県松戸市で、当時小学3年生だったリンさんは登校中に行方不明になり、遺体で発見された。通っていた小学校の保護者会長だった男に連れ去られ、殺害されていた。 「日本とベトナムの架け橋になりたい」 事件後、娘を亡くした喪失感… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
市街地のクマ出没に奔走 専門職員が考えるクマとの「適度な距離」
2023年は、クマの出没が激増した一年だった。人とクマとの不幸な遭遇をなくし、「適度な距離」を保つにはどうすればいいのか。クマの生態や現場対応に詳しい専門家、近藤麻実さん=秋田県自然保護課主任=に聞いた。 東北地方の自治体で初めてクマ対策の専門職として採用され、現場の指導にあたっています。麻酔銃を使えるかといった法的問題を含め、全体状況を見ながら対応を助言しています。 今年度の秋田のクマ出没は異常です。人身被害は過去最多だった2017年度の20人を大きく上回る70人に達し、警察に報告のあった目撃情報だけでも昨年度の約730件に対して今年度は3600件以上。農作物被害は10月末現在で1億3千万円に上ります。市街地の出没など対応の難しいケースでは、市町村や警察からの要請で急行しますが、そうした「緊急出動」を含め現場対応は100回を超えました。 人が襲われた悲惨な現場では、住民や地域に及ぼす恐怖を実感します。農作業で外出するのも怖い、犬の散歩もできなくなったなど、日常生活が制約され、数字に表れない精神的被害の大きさを感じます。 2019年のクマ出没対応中の事故 クマとの不幸な遭遇を避ける… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
カフェ・アマティの88年に幕 物価高に人手不足、常連客は泣いた
クラシックが流れる店内で楽しむ1杯600円のコーヒー。アンティークのランプのやさしい明かりの中で、客は静かに会話を交わし、ほっとするひとときを過ごす――。 国内最古級の喫茶店として、都内にチェーン展開してきた「亜麻亜亭(アマーテ)」(カフェ・アマティ)。25日、池袋駅地下街にあった最後の店が閉店し、88年の歴史に幕を下ろす。 今月下旬、東京都日野市の堀江アサ子さん(74)は、バスと電車を乗り継ぎ、友人と閉店前の店を訪れた。「とにかく寂しくて、ちゃんとお別れをしたくてきました」 店には池袋以外も含め、20年近く通った。「食器もきれいで、レトロな雰囲気が好き。店員さんもすてきでした。他の喫茶店とは違います」。お気に入りのボウルサラダをほおばり、紅茶を味わいながらそう語った。 かつては月2千万円の売り上げ 「時代の変化についていけなかった」。店を運営する齋藤商事の常務取締役、山内園美さん(57)は、声を落とす。 1935年、初代社長が大久… Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
坊っちゃん列車、廃校、インバウンド…共通キーワードは「人口減少」
伊予鉄道(松山市)の観光列車「坊っちゃん列車」が運休となってから、もうすぐ2カ月になる。 「運転士不足」が主な理由だという。愛媛に赴任して1年。時折遠くで汽笛を聞きながら、いつか乗らねばと思っていたのに。 取材では、たびたび松山市を出て、遠く離れた海沿いや山間部を訪れた。必ずといっていいほど、廃校となった校舎があった。 松山空港では、コロナ禍で運休していた松山―ソウル線が3月末に運航を再開し、10月末からは毎日運航に。釜山を結ぶ定期路線も11月から新たに始まった。外国人観光客が街中に戻ってきた。 坊っちゃん列車、廃校、外国人。互いに関係ないようにみえるが、あるキーワードでつながっている。 人口減少問題だ。 坊っちゃん列車の運転士不足は、他業種との人材の奪い合いが起こした面はある。ただ、そもそも若い世代がたくさんいれば起きない問題でもある。 廃校については言うまでもないだろう。山間部の過疎化は進むばかりだ。 そして、外国人。なぜ人口減少問題と関わるかといえば、国内の観光需要が減るなかでは外国からの呼び込みがカギを握る。労働力確保の面でも同じことがいえる。 右肩上がりの「昭和的思考」から脱却を 愛媛県は2060年に人口が20年比で4割超も減るとの推計を昨秋出した。育児と仕事の両立を応援する企業への奨励金を設けるなど対策を打ち出す。 北欧では子育て支援などが充実し、日本の自治体もモデルとしてきた。だがフィンランドではここ数年、1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を示す「合計特殊出生率」が低下している。少子化対策は、事ほどさように難しい。 政策はもちろん大事だが、もっと大切なのは、人口減少社会に合わせた生き方を私たち一人ひとりが模索することだ。 人口や経済の右肩上がりだけを求める「昭和的思考」から脱し、多様で自由な人生を描こうとする動きにも、来年は目をこらしていきたい。(神谷毅) Source : 社会 – 朝日新聞デジタル